ナノオーダーの
超小型発光素子を実現

物質研究所
電子セラミックスグループ
羽田 肇

太陽誘電(株)
WIN開発企画部長
藤本 正之



 発光素子は、自動車等の高彩度表示装置等に利用されており、更なる小型かつ超高精細な表示システム実現による携帯機器、PDA(Personal Digital Assistance)のディスプレイ等への商品応用が期待されています。しかし、従来のプロセスでは、厚膜印刷による蛍光体発光部分と駆動用半導体チップとを別々に構成するため、小型化、低コスト化には限界がありました。
 そこで、電子セラミックスグループでは、「セラミックスインテグレーション※1技術による新機能材料創製に関する研究」(太陽誘電株式会社との共同研究)の一環として、ナノメーターオーダーのシリコン微細加工技術と、自動車等で利用される低電圧動作紫外線発光素子の中で他の紫外発光をする材料(GaN)などに較べて安価な酸化亜鉛に着目し、ナノメーターオーダーの高精細酸化亜鉛発光アレイの実現に成功しました。発光アレイとは、一般的に、列状に並んだ発光体を指しますが、今回のものはさらに二次元化し、格子状になっています。今回、実現可能とした主なポイントは、(1)シリコン表面上に逆ピラミッド型の微細キャビティを形成する際に、(100)面シリコン基板に四面シリコン(111)面を利用し「結晶異方性エッチング」を行ったこと、(2)「CMP(機械化学研磨,Chemical Mechanical Polishing)平坦化処理」と呼ばれる研磨方法にて原子レベルに限りなく近く表面平坦化処理をしたことの2点となります(図参照)。発光素子の蛍光発光状態は、走査電子顕微鏡を用いて電子線を照射した際に発する紫外光を検出するという方法で、390nmの波長を持つ蛍光発光を確認しました。
 今後、携帯電話、PDAなどの小型化・高精細化が求められるディスプレイ以外にも、シリコンデバイスと一体化(集積化)された超小型バリスタ、超小型圧電アレイなどへの応用が大いに期待されます。
(本研究の成果は、日刊工業新聞、日本工業新聞、日経産業新聞など各紙に紹介されました。)

図 開発成果と主な技術ポイント



※1セラミックスインテグレーション:機能性セラミックスのさらなる技術高度化に向けた各種機能材料の統合化、複合化による多機能実現を目指す新しい材料・設計技術




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