紫外領域で室温発光する
新型窒化ホウ素の合成に成功

物質研究所
非酸化物焼結体グループ
小松 正二郎



 ダイヤモンドと同じ結合性を持つ窒化ホウ素(BN)は発光素子開発に必要な微量不純物原子のドーピングが容易であり、バンドギャップが約6eVと広く、200nmに近い短波長領域をねらえる数少ない固体紫外発光源候補の一つですが、従来、超高圧合成が必要であり、薄膜化・高純度化などに困難がありました。
 今回、レーザー照射で発生した結晶の萌芽的な核を、プラズマパケット(プラズマのかたまり)中で成長させる新手法(プラズマパケット法)を用いることで、225nm室温発光性の新型BNの合成に成功しました。これは、正式にはsp3結合性5H-BNと呼ばれ、1999年に当機構にて水素化ホウ素ガスを原料にして紫外光励起表面反応により世界で初めて合成された物質です。新手法を用いた結果、結晶を構成する粒の大きさがナノメーターからミクロメーターへと1000倍になり、225nmの室温紫外発光が可能になりました。
 窒化ホウ素焼結体を集光したパルスレーザー光(波長193nm、20Hz)で照射すると、BN表面が超高温によりプラズマ化し、高密度かつ短寿命のBNプラズマパケットが パルス的に繰り返し生成します。一方で、ラジオ周波数の電界により励起されたアンモニア・アルゴン混合ガス・プラズマに、同じく20Hzの矩形波で変調をかけ、反応性プラズマパケットを生成します。この反応性プラズマパケットと前述のレーザー励起BNプラズマパケットの発生タイミングを同じにすることで、両者の衝突・混合する領域において新型のBNを成長させます(図1)。
 プラズマ中での滞在時間の調整により、ミクロメーターオーダーの極めて欠陥の少ないsp3結合性5H-BN結晶が得られました(図2(a)〜(c))。試料は、室温において225nm
の強い紫外発光を示しました(図2(d))。
 本材料をもとに固体紫外レーザーが実用化されれば、その連続発振性とコンパクト性により、超高密度の光記録素子や超微細光レーザ・メスの実現など、産業・医療・基礎科学のあらゆる側面において極めて大きな波及効果をもたらすことが期待されます。
(本研究成果は、日刊工業新聞、日本工業新聞、日経産業新聞、化学工業日報、科学新聞の各紙に紹介されました。)


図1 合成法の概念図

図2 (a)(b)(c)試料の拡大率を変えた透過型電子顕微鏡像.欠陥の少ない原子配列を示している.(d)20kVの電子線照射により励起された試料の紫外発光のスペクトル.225nm付近に鋭いピークを持つ


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