高効率酸化チタン光触媒を実現

物質研究所
機能性ガラスグル−プ
井上 悟



 酸化チタン光触媒は、有害化学物質の分解に効果があることが知られており、環境ホルモン類の分解、大気汚染物質の浄化、ダイオキシン類の分解・除去などの様々な分野への応用が期待されています。私達は、ガラス板上に薄膜の多孔体を作製し、この細孔内壁に酸化チタンを固定することによって、面積あたりの触媒量を増加させて高効率光触媒を開発しました。
 ガラス板上への薄膜の多孔体形成は、液晶のディスプレ−に使われている透明で電気を通す薄い膜のついたガラスの表面に薄くアルミニウムを付け、それを電気分解する新規の技術により実現しました。これにより、ガラス板上にナノメ−タサイズの細孔が配列している薄い酸化アルミニウムの膜ができます(図左側上部参照)。ガラス板の上にこうした構造を作製したのは世界で初めてです。このようにして形成した細孔の中へ酸化チタンの原料溶液を導入して細孔の壁に酸化チタンの原料膜を形成します。最後に、全体を加熱してしっかりとした酸化チタンの膜にすることで、光触媒ができます。
 性能の評価は、アセトアルデヒドの光分解反応により発生する炭酸ガスの量を計る方法で確認しました。実験結果は同じ面積当たりに換算してあります。図に新触媒の断面模式図と触媒性能評価結果のグラフを示してあります。触媒性能は、炭酸ガスの発生量を紫外線の照射時間のグラフで示してあります。
 ガラス板上に薄く触媒層を形成しており透明で光が透過します。触媒性能については、現在市販されている酸化チタン高効率光触媒であるドイツ国Degussa(デグッサ)社の
P-25触媒り陦かにしのぐ分解速度(13倍)が得られています。飛躍的に効率が向上したのは、(1)表面積の増加による反応の促進、(2)全体が透明であることによる光の照射効率の増加(表紙写真下参照)、の相乗効果によるものと考えています。
 今回開発された高効率酸化チタン光触媒は分解速度が飛躍的に改善されており、空気浄化などの用途に適しています。また、電気分解技術を応用しているため、大きな面積の物を作ることもでき、透光性により外部から光を取り込む浄化機能付きのガラス窓への応用も可能です。更に、電気分解法、液状原料導入法のどちらも曲面でも適用できるため、用途に合わせた特殊形状にも対応でき、様々な用途に応用できるものと期待されます。
(本研究成果は、日刊工業新聞、日本工業新聞、日経産業新聞、化学工業日報、毎日新聞、読売新聞の各紙に紹介されました。)

図 新規光触媒の仕組みとアセトアルデヒド分解反応より発生する積算炭酸ガス量のグラフ



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