国産宇宙ロケットを支える材料強度データシート

H-II Aロケット計画と材料強度データの活用

宇宙開発事業団
H-II Aプロジェクト
今野 彰



 日本の実利用ロケットの打上げは、N-I、N-II、H-I、及びH-IIロケットを含め29機の打上げまでは、100%の成功率を誇っていました。しかし、H-II ロケットの5号機、8号機の打上げが連続して失敗し、我々の技術の未完成さを認識するとともに多くの教訓を得ることになりました。世界的にみて、ロケットの打上げ成功率は88〜94%のレベルであり、今後ロケット技術をより成熟させるためには、失敗から学び更に改良することが極めて重要なことです。特にロケットの打上げの成功/失敗の鍵を握っているのが液体ロケットエンジンです。H-II の場合でも、回収したエンジン(写真1)を調査した結果、失敗の原因はエンジンに在り、金属材料の疲労が要因となっています。
 液体ロケットエンジンの信頼性とロバスト性(壊れにくさ)を向上させるためには、エンジンの過酷な環境(高温・高圧、極低温、熱衝撃、水素)での設計余裕を精度高く把握して、設計の改良に繋げるとともに、設計余裕を配慮した製造・検査の工程を設定する必要があります。そのために重要なのが、使用材料の強度データです。
 H-II のコストと性能を改良したH-II Aの確実な開発と信頼性向上のために、宇宙科学研究所、航空宇宙技術研究所、宇宙開発事業団の宇宙3機関と物質・材料研究機構が連携して、液体ロケットエンジン材料データベースの構築を目指した研究を行っています。既に得られたデータは、第1段エンジンLE-7Aと第2段のLE-5Bの設計評価に使用され、H-II Aロケットの4機連続の打上げ成功に大きく寄与しています(写真2)。

写真1 海底に沈むLE-7エンジン(上)と
破損した液体水素ターボポンプインデューサ(下)

写真2 H-II Aロケット4号機の飛行



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