新年のあいさつ

最先端物質・材料研究と技術展開

理事長
岸 輝雄



 新年おめでとうございます。
 昨年は科学技術にとっても動きがあった年といえます。日本人による二つのノーベル賞受賞は、基礎研究の厚さを示すニュースでした。国立大学は非国家公務員型の独立行政法人への移行が決まり、また21世紀COE(分野別ベスト30)により評価に基づく研究資金の配分が大学単位で行われました。身近な所では宇宙3機関の統合、そして特殊法人の独立行政法人への移行が現実化しています。
 しかしながら、何といっても経済状態の悪化に伴い、科学技術の分野では成果の産業実用化が強く要請されています。産学官サミットが積極的に執り行われ、我々の関係するナノテクノロジー・材料の分野においても3〜5年後の産業発掘を目的とした内閣府におけるタスクフォースが昨年12月にとりまとめを発表するに至っております。
 このような研究環境の中でNIMSは若干の初期故障の部分も乗り越え、国の第3者機関による評価ではAの評価結果をいただき、各ユニット(研究所、センター、ステーション)の成果も向上し、旧2研究所の融合も進む中で活気を呈してきたものと期待しています。研究組織は昨年4月に超鉄鋼、強磁場、エコマテリアルの3センター、そして分析ステーションを立ち上げ、既存分野の効率の良い発展を考えております。充実させる分野としてはナノテクノロジー、生体材料と共にエコマテリアルを今後の課題とし、既存分野の発展と新分野構築のバランスをとるよう引き続き努力してまいります。
 評価に関してはPapers (Publication)、Patent, Productsを定量的な3Pと称し、それに加えて科学技術貢献をNIMS内で評価する体制を整えました。この4つの評価項目のどこか一つに優れた業績を残す、すなわち一芸に秀でる研究者の育成を目指しています。研究者の処遇に関してはこれらの個人評価を若干反映させることを計画しております。
 組織、制度を整えてはまいりましたが、もちろん重要なのは研究成果そのものです。物質・材料研究は基本的に優れた個人の能力の集積に負うところが大きい分野といえます。研究者個人が自分の研鑽に励むべく、そして特に若手研究者が大きな成果を挙げ得るべく研究環境整備に勤めたいと考えております。一方で、NIMSとして現在取り組むべき最大の課題は研究成果の実用化にあるといえます。技術展開室・産学独連携室等で検討が進んでいますが、使われてこそ材料という精神で、より一層の取り組みが必要です。文部科学省の研究機構としては基礎・基盤研究を第一に据え、実用化の可能なものを積極的に技術移転、知識移転すべきものといえましょう。
 本年もまた最先端の物質・材料研究への推進を目指して、NIMS内外の皆様のご指導をお願いすると共に、皆様のますますのご発展をお祈り申し上げます。


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