エコマテリアル研究

高特性ナノイオニクス材料の設計エコマテリアル研究

エコマテリアル研究センター
環境エネルギー材料グループ
森 利之



 環境保全と増え続けるエネルギー需要への対応が求められているなか、酸素と燃料(水素などの可燃性ガス)から電気を生み出すクリーンエネルギー発電である燃料電池が注目されています。このクリーンエネルギーを「いつでも、誰でも、どこでも」利用できるようにするために、電池の低温高効率発電や小型携帯化が望まれています。本研究では、燃料電池を構成する固体電解質の微細構造を設計し、高性能固体電解質及び燃料電池の作製を目指します。
 エレクトロニクス材料では電子が主役ですが、イオニクス材料では、イオンが主役です。通常、酸化物イオン(O2-)が、結晶中を拡散するには、イオンの通り道である酸素欠陥が必要です。イオンが1つの酸素欠陥から別の欠陥に移ることで、電気が通るようになり、この機能を発電に利用しています。
 酸素欠陥を結晶内につくるために用いられる元素は、通常イオン半径が大きいので、
結晶内に無理な力(結晶歪み)が加わります。従来の研究では、ナノメートル(1nm=10-9m)の大きさで、不可避的に導入される歪みや、歪みを緩和するために生じる歪みの緩衝地帯(マイクロドメインと呼ばれます)とイオン伝導特性の関係(図参照)について十分には検討されてきませんでした。
 そこで本グループでは、酸化物イオン伝導の妨げになると思われるマイクロドメインの構造解析、成長機構の検討、歪みの少ない組成の探索、ナノサイズの易焼結性粉末を利用した焼結体中のドメイン成長抑制方法の検討、及びマイクロドメインをもつナノへテロ構造中の伝導機構の理論的解析とその最適化などを行うことで、高特性ナノイオニクス材料の創製を目指します。本研究内容の詳細は、(http://www.nims.go.jp/ecoenergy/mori-files/contents1.htm)に適宜公表していきます。ご参照ください。


図 マイクロドメインサイズと導電率の関係:
a)Sm0.2Ce0.8O1.9 b)(La0.75Sr0.2Ba0.050.175Ce0.825O1.89
の焼結体粒内の格子像.白波線内部がマイクロドメイン




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