エコマテリアル研究

エコデバイスのためのスマートディスアセンブリ

エコマテリアル研究センター
エコデバイスグループ
細田 奈麻絵
(東京大学より併任)



 環境破壊は今や人類が招いた深刻な問題であり、その対策が迫られています。環境破壊を生み出してきたこれまでの消費型システムは循環型システムへと変換することが不可欠であり、それにはプロダクト、プロセス、マテリアル、サービス、社会システム、ビジネスシステムなど多方面にエコデザイン(環境調和型デザイン)を取り入れる必要があります。エコデザインに基づく新しい技術体系はライフサイクルエンジニアリングを基本としています。その中でもプロダクトやマテリアルのリサイクルにとって分離・解体技術はそのコア技術と言えるでしょう。
 エコデバイスグループでは簡単にバラバラになるような新しい接合技術の開発に取り組んでいます。これをスマートディスアセンブリと呼んでその条件として次のような項目を挙げています。
 1) アクティブディスアセンブリ 2) 易解体性設計
 3) セレクティブ性      4) 解体情報の伝達
 ここでは、1)のアクティブディスアセンブリについてのみ述べます。アクティブディスアセンブリは、構造物に解体機構やエネルギー変換機構を予め内在させることにより、低エネルギーで容易に組み立て構造を分離しようとするものです。この分離解体の機構は、マクロな機構に限るものではなくミクロな機構あるいは材料に内在される原子レベルの機構にまで拡張されます。私達はこれまでに、常温接合などにより接合した界面を、場や雰囲気を利用する非接触操作により接合部の結合状態をコントロールして界面に離層を形成させ、自発的に分離を起こす方法を提案してきました(図)。これを実現化するため、1) 接合界面に脆い化合物層や空隙を発生させ分離する方法や、2) 水素と反応すると微粉化する性質をもつ材料を予め界面に挿入して、分離したい時に水素雰囲気に持って行くと微粉化・剥離により界面が分離する方法などを提案し、可逆的な接合分離の可能性を実証しました。ここで用いている常温接合とは、固体清浄表面が持つ活性を利用することで接合を達成させるもので、表面活性化常温接合法と呼んでいます。この手法は介在物のない直接接合が可能であり界面制御に適しています。具体例としてダイヤモンドとアルミニウムによる常温接合界面の透過型電子顕微鏡像を示します(表紙写真上)。この技術で作られた接合界面は酸化物層などの介在物がないため電気的特性に優れていることや、これまで直接接合が不可能であった異種材料の組み合わせでも接合が可能であることを示してきました。
 これらの技術は次世代パッケージングへの応用やその使用後の基板からの分離への適用が期待されています。


図 樹木は自身を守り存続するために葉を自発的に落とすメカニズムを持っています
エコデザインされた接合部は、樹木の葉が秋に落葉するメカニズムとどこか似ています




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