エコマテリアル研究

リサイクルを考えた材料開発の取り組み
− 不純物含有スクラップを利用した材料の開発 −

エコマテリアル研究センター
環境循環材料グループ
大澤 嘉昭



 家電リサイクル法や自動車リサイクル法が施行されるなど、近年、循環型社会の構築に向けた取り組みが行われています。
 材料のリサイクルを考えた場合、以下の3点を検討することが必要です。1) 材料の複合化対策:設計時に易解体性を付与し、異種材料を分離可能とします。2) 材料の合金化対策:一般的な構造材では鉄系、銅系、アルミニウム系などで代表的な材料を決め、それら以外の組成を持つ材料の使用を極力避けます。3) リサイクルでの不純物の増加対策:リサイクルごとに不純物が増加するため、リサイクル技術を確立します。当機構で研究中のリサイクルで不純物が増えたときの材料開発の取り組みについて以下に紹介します。
 現在、自動車のリサイクルでは、廃車をシュレッダーにかけ細かく粉砕し、材料ごとに分別してから利用しています。分別後の金属中にも、小型モータなどの粉砕品では、ケースの鉄とコイルの銅が複合化したものがあります。このような不純物が混入した鉄スクラップは、原材料として利用できず埋め立て廃棄処分されます。近年、廃棄処分場の不足などから、不純物含有スクラップの有効利用法の開発が望まれています。
 鉄中に銅が混入すると、熱間圧延時の割れの原因となり、許容量の大きい建築用の棒鋼でも 0.4 mass % が限界と言われています。銅の量が多くなると鉄の固溶量を超え、鉄と銅が2相に分離した組織を持つ材料となり、熱間圧延では銅の融点以上の温度での加工ができないなど、リサイクルでの問題があります。銅含有鉄スクラップを溶解後、当機構で開発した金属粉末作製法である高圧水アトマイズ法により急速凝固させ、鉄中に銅を微細に分散させた粉末を作製しました。この粉末をシース缶に封入し、銅の液相が生じない温度領域の 600〜700 ℃ で溝ロール圧延という強加工を施す固化成形加工により、図に示すように従来の鉄粉末の焼結法のみならず、溶製材の強度さえも上回る高強度材を創製することに成功しました。この高強度化のメカニズムは、鉄粉末中に銅がナノメートルサイズで存在した微細結晶粒組織の粉末となり、この粉末同士が低温の強加工で結びつき、不純物の銅を封じ込めた状態で成形できたためと考えられます。
 さらに、スチール缶のように胴部がスチール、蓋部がアルミニウム合金というように、鉄スクラップ中にアルミニウムを含有する材料の利用法も検討しています。この場合、鋳鉄原料に使用することで、耐摩耗性、制振性および高温酸化性に優れた材料になることが見いだされました。


図 銅含有量を変化させた鉄一銅急速凝固粉末の固化成形体の引張強度




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