加工熱処理材でリン添加効果を確認

超鉄鋼研究センター
(現 三菱重工業(株))
平田 耕一

 

超鉄鋼研究センター
冶金グループ
長井 寿



 スクラップから良質の再生材をつくるために、不純物をできる限り取り除くのが常道とすれば、不純物をむしろ積極的に利用する逆転のアイデアに超鉄鋼研究センターは挑戦しています。
 リンなどの不純物は大きく凝集すると材料の性質を損ねます。そこで、急冷凝固法によって、微細な凝固組織の中に微細な凝集状態を造り込みます。検討している冷却速度は、高炉-連続鋳造法での約0.1K/秒と比べて10倍以上の1〜1000 K/秒の範囲です。
 超鉄鋼研究センターでは既に冷却速度:数100K/秒の急冷凝固によって、0.1%炭素鋼(SS330グレード)にリンを0.1%以上添加した無欠陥の鋳造板(厚さ3ミリ)の製造に成功しています。今回それに加工熱処理を加えて、1.2ミリの板材にしました。その結果、リン添加材が、リン無添加材と同等の延性を保ちつつ、より高い強さを示すことを確認しました(図1参照)。
 残念ながら、今回の加工熱処理では顕著な結晶粒微細化は得られていません。しかし、図2に示すように、急冷凝固で微細な凝固組織ができ、加工熱処理によってリンのほぼ均一な分布が得られています。その結果、良好な延性を保持しつつ、リンによる強化が有効に引き出されたものと考えています。
 今回の成果を土台として、さらに詳細な検討を加え、強度1.5倍化(SS490グレードへ)を達成する計画です。




図1 加工熱処理材における引張強さと全のびの関係
リン0.10%添加により50MPa以上の強化が認められる

 

図2 リン分布図(XMA):リン(0.10%添加)
の分布は加工熱処理によりほぼ均一化する




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