固液界面における液体原子の
規則化の観察に成功

ナノマテリアル研究所

 

ナノキャラクタリゼーショングループ

古屋 一夫

長谷川 明

三石 和貴



 我々のグループは、イギリス・サルフォード大学、アメリカ・アルゴンヌ国立研究所、アメリカ・ローレンスバークレー国立研究所のグループと共同で、微小空間に閉じこめられた希ガス液体の規則化を観察することに世界で初めて成功しました。
 固体-液体界面において液体原子が固体界面の影響で規則的な層状構造を持つことは理論的には予測されていましたが、実験的には確認されていませんでした。今回、アルミニウム中のキセノン析出物の固体-液体界面を高分解能電子顕微鏡法で詳細に調べることで、世界で初めて実験に成功しました。図に示したように、液体キセノン析出物の内側には界面に平行な縞模様がほぼすべての面において観察されています。
 分子動力学を用いて界面からの原子の分布を計算するとこれらの縞模様は原子面に対応しており、この厚さは3層分で約1nmであることがわかりました。このことは固体-液体界面において、液体原子は固体界面の影響を強く受けていることを示しており、粒子のサイズが小さくなると、析出物の全体の構造が固体界面の影響を反映したものとなることを意味しています。
 もしキセノン原子がそのようなサイズになったらどのような構造をとるかを分子動力学計算から調べると、キセノンの構造は通常観察される面心立方格子という構造ではなく、体心立方格子に変化することがわかりました。これは粒子のサイズを小さくしていくと中に閉じこめられる原子の構造が固体界面の影響によって変化することを示しており、母層の材料と閉じこめられる材料の組み合わせを適当に選ぶことで、これまで観察されたことのない構造を得ることが可能になることを示しているため、新材料の創製に貢献することが期待されます。
(本研究成果は、米国科学誌「サイエンス」(Ref. SCIENCE Vol 296 19 April 2002)で発表されたほか、日刊工業、日本工業、化学工業日報の国内各紙に紹介されました。)

図 アルミニウム中の液体状態にあるキセノン微粒子。
縦に並んだ六角形に見える大きな粒子が液体状態のキセノン原子が詰まった微粒子で、左下に見える格子縞を持った小さな六角形が固体状態のキセノン微結晶。
矢印で示した部分に界面に平行な縞模様が観察され規則化している様子がわかります。



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