−カーボンナノ温度計の開発に成功− |
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物質研究所 |
今回、私たちのグループは、カーボンナノチューブが温度計の作用をすることを世界で最初に発見し、「カーボンナノ温度計(Carbon
Nanothermometer)」と命名しました。その成果は米国科学誌ネイチャー(Nature, 415, 599,
2002)に掲載され、世界的な反響を起こしました。 今回開発したカーボンナノ温度計は、カーボンナノチューブの中に金属ガリウム (Ga)柱を注入し、液体状ガリウム柱が温度で伸びたり縮んだりするのを利用して温度計測を行うものです。液体ガリウム柱の膨脹や収縮現象は、「水銀温度計」の水銀柱の挙動と全く同じものです。 アモルファスのカーボン微粒子と酸化ガリウム(Ga2O3)を窒素ガス中において約1360℃で約1時間反応をさせると、直径が100nm以下で長さが数ミクロンのカーボンナノチューブが生成されました。ほとんどのカーボンナノチューブの中に直径が80nm程度で長さが1ミクロン以下の金属ガリウム柱がチューブ内に生成していました。この試料を電子顕微鏡(TEM)で観察すると、電子ビームによる加熱効果で偶然にチューブ内のガリウム柱が伸びたり縮んだりする現象を発見しました。図1は電子顕微鏡内で試料温度を正確に測定しながら、ガリウム柱の長さが変化する様子を示したものです。約50℃から約500℃の温度範囲で試料を加熱すると、金属ガリウム柱の長さが増減します。このような変化は液体状態の金属ガリウムが温度による熱膨張で体積変化を起こした結果です。 ガリウム柱の長さの増減を温度変化により正確に測定すると、図2のようにガリウム注の長さは温度上昇に対して直線的に比例し、しかもその変化は可逆的です。また、カーボンナノチューブは熱に対して約1000℃まで安定なので、カーボンナノ温度計は1000℃の高温までの温度計測が可能です。「カーボンナノ温度計」はカーボンナノチューブの新しい応用を切り開くものとして、特に、ミクロン以下の微小な空間での温度測定を可能にすることから、微細な電子回路の異常の検出や点検などナノエレクトロニクスへの幅広い応用が将来期待されます。 |
(本研究成果は、New York Timesのほか、朝日、読売、毎日、産経、日経など国内各紙に紹介されました。) |
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図1 カーボンナノ温度計 |
図2 液体ガリウム柱の増減の温度変化 |