クローズドセル構造金属材料
−三次元マイクロハニカム構造をした金属材料の開発−

材料研究所
機能融合材料グループ
岸本 哲



 生物の細胞のような構造(セル構造)をした材料は、その特異な構造のために多種にわたる機能を有すると考えられます。蜂の巣の形をした二次元のハニカム構造は軽量で、ある方向からは曲がり難く潰れにくいという性質を持っています。もし、図1(d)に示すような、三次元的なハニカム構造(クローズドセル構造)を創り、さらにハニカム構造の中に壁とは異なる物質を内包させることができれば、新たな機能を生み出すことができると考えられます。
 そこで、当機構では、微細な三次元ハニカム構造を持ち、内部にセル壁とは異なる物質を含む金属材料、すなわちクローズドセル構造金属材料の作製に成功しました。その作製方法を図1に示します。まず、ハニカム構造の中に内包したい材料(本研究では有機物)の粒子に金属をコーティングし(図1(b))、これを押し固めて粒子を多角形に変形させ(図1(c))、さらにこれを高温で焼き固めると図1(d)に示すような三次元マイクロハニカム構造をした金属材料が得られます。この材料の断面を図2に示します。大きさ約10ミクロンのニッケル−リン合金でできた三次元ハニカム構造の中に有機物が閉じこめられているものです。この材料はアルミニウムよりも軽く、変形の際のエネルギー吸収性が大きく、揺れを止める能力の制振性にも優れた材料であることがわかりました。
 将来的には宇宙構造材料や高速飛翔体用材料として、高強度、高弾性で、かつエネルギー吸収性や制振性の良い材料へ発展させていく予定です。

図1 クローズドセル構造金属材料の作製方法

図2 クローズドセル構造金属材料の断面の
走査型電子顕微鏡写真





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