新世紀耐熱材料プロジェクト
材料研究とシステム研究の融合
―仮想タービンによる新材料の適用評価―

仮想タービンチーム
吉田 豊明
((独)航空宇宙技術研究所より併任)



 新世紀耐熱材料プロジェクトでは、ガスタービンの熱効率を飛躍的に高めることにより地球温暖化対策に寄与することを目的として、耐熱材料が開発されています。これらを実際にガスタービンに適用するには、時間と経費のかかる種々の材料データ取得、試作研究などが必要です。しかし、材料の強度特性、適用するタービンの形状、作動条件がわかっていれば、あらかじめコンピュータによるシミュレーションでタービンの性能を評価することができます。
 仮想タービンチームでは、新材料をタービンに適用すると既存の材料に比べて出力、熱効率など諸性能がどの程度向上し、CO2排出量が低下するかを定量的に評価するため、具体的な大きさ、形状、作動条件を想定した仮想タービンを構築しています。
 新材料を適用する高圧タービンの静翼、動翼については、材料のクリープ破壊強さ、高温耐酸化性から設定した応力基準値、耐用温度以下になるように、タービンの作動条件を算出し、さらにタービン出力など全体の諸性能を評価します。
 現在、タービン翼強度評価のための材料特性のデータベース構築、タービン部の詳細な空力特性、冷却特性、応力特性を評価するためのデータベース構築、仮想タービンの基本的なパッケージ作り等を進めていますが、初期の仮想タービン第1次モデル(15MWクラス中型ガスタービン、VT-M10)が完成しました。
 図は仮想タービンVT-M10の入出力画面の一部です。ガスタービン出力レベル、タービン入口温度、および従来材/新材料の種類を入力すると、出力として諸性能とその変化率を知ることができます。また、タービン静翼、動翼の強度評価結果なども出力されます。ここに示したシミュレーションの例では、新材料TMS-82+を適用してタービン入口温度を1700℃に高めるとCO2の排出量は12.9%も低減されることがわかります。
 今後、このようなシミュレーション結果の図表、画像表示の熟成、さらに評価の高度化を進めるとともに、WWWでの公開/利用に適した仮想タービンの構築なども予定しています。

図 仮想タービンの入力・出力例



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