新世紀耐熱材料プロジェクト
1800℃への挑戦
―高融点超合金のクリープ特性―

高融点超合金チーム
御手洗 容子



 高融点超合金チームでは、より高温で使用可能な材料を求めて、融点が2447℃のIrをベースにした合金に、fcc構造を持つ母相中に原子が規則的に配置したfcc構造(L12)を持つ析出物を整合に生成させることにより高温強度の向上に挑戦しています。高温で材料を使用すると、自重でも変形を起こすクリープという現象が起こるため、高温材料として使用できるかどうかを判断するのにクリープ特性はとても重要です。これまで、主に二元合金のクリープ特性について検討してきました。Ir-Nb合金では、析出物の形態は整合な立方体状となり、Ir-Zr合金は、板状の析出物が生成して整合な迷路状の組織を示します。これらの合金に、1500℃の温度で一定の荷重を負荷して変形の様子を見る圧縮クリープ試験を行ったところ、300時間経過した後でも2%程度の変形しか起こりません。しかし、1650℃になると15時間あまりで変形が加速的に進み
(図a)、さらに1800℃になると、わずか2、3時間で加速的に変形し、5%も変形します(図b)。
 そこで、二元合金に第三元素を添加することによるクリープ特性の影響を調べました。第三元素としてはNi, Zrを選びました。NiはIrと全率固溶するため、fcc相とL12相の二相が安定であるだろうという予想から、ZrはIrとfcc+L12二相を形成するため、Ir-Nb合金に添加しても二相が保たれるであろうという予想からです。Ni添加合金はIr-15at%Nbに対してNi濃度が20at%程度までは二相が保たれました。Zr添加合金は、Ir-Nb側からIr-Zr側にfcc+L12二相領域がつながっていることがわかりました。これらの合金を1650℃で圧縮クリープ試験したところ、Ni添加により250時間試験後でもクリープ歪みが2%程度でした(図a)。1800℃では、Ni添加量が多いと歪み量も多くなりますが、1at%程度の添加では100時間試験後のクリープ歪みは3%程度でした。Zr添加合金も1800℃におけるクリープ歪みは100時間試験後に3%程度であり、NiやZrを適量添加することにより、クリープ歪みを劇的に抑えられることが明らかとなりました。現在、第三元素添加によるクリープ特性向上のメカニズムを検討中です。また、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「産業技術研究助成事業」として、延性に優れた合金の開発も行っています。

図 Ir合金の圧縮クリープ曲線



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