新世紀耐熱材料プロジェクト
第4世代Ni基単結晶超合金の開発

Ni基超合金チーム
小泉 裕



 Ni基超合金は、高温強度、延性、耐酸化性、耐食性、製造性など総合特性に最も優れた耐熱材料としてジェットエンジンやガスタービンの高温部材に使用されています。
 近年、地球温暖化防止のためのCO2削減を達成する有力な手段の一つとしてガスタービンの効率をさらに向上させたコンバインド発電(ガスタービン単体とその廃熱を利用した蒸気タービンとの組み合わせ)、コジェネレーション(熱電併給)、ジェットエンジンなど各種ガスタービンが注目されています。効率を上げるにはタービンの入り口温度が高いほど向上しますが、耐熱材料にとってはより過酷な条件となるため耐用温度の高いNi基超合金の開発が世界各国で活発に行われています。
 例えば、実機使用されている第3世代の超合金は、レニウム(Re)を約6重量%添加させることにより、中・低温側の強度が優れていますが、高温長時間での組織安定性が不十分なため、より耐用温度の高い第4世代の開発が期待されています。
 新世紀耐熱材料プロジェクトで開発した第3世代のTMS-75をベースに、さらに高強度の第4世代Ni基単結晶超合金TMS-138を石川島播磨重工業株式会社と共同開発しました。開発合金はより高温強度を増すために、すでに含有されているMoをさらに増量しました。また、プロジェクトでは白金属元素の添加が組織安定性に有効であることをすでに発表していますが、今回の開発合金にはルテニウム(Ru)を約2重量%添加しました。図1はクリープ試験の結果ですが、第3世代の超合金よりクリープ強度が優れ、特にガスタービン設計で重要な1%クリープ歪み時間は第3世代の140時間に対して2倍以上特性が優れています。また、図2のようにTMS-138は鋳造性にも優れ、空冷動翼に鋳造できました。実用化が大いに期待されます。


図1 クリープ試験の結果

図2 全長約100mmの空冷動翼に
単結晶鋳造されたTMS-138
(石川島播磨重工業(株)で鋳造)



メモ・・・・・TMS合金の名称について
当機構の所在地は現在つくば市ですが、移転前は東京都目黒区にありました。そこで開発された初期の単結晶超合金をTokyo Meguro Single crystal(TMS)と命名しました。その後つくばへ移転してからはTsukuba Metal Single crystalとしてTMSの名称は引き継がれています。


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