独法成果活用事業プロジェクト

超鉄鋼研究成果の商品化を目指して

超鉄鋼研究センター
耐食グループ
片田 康行



 これまで述べてきましたように、超鉄鋼プロジェクトの第1期研究ではいくつかの特筆すべき成果が得られており、それらの実用化を目指してさらに5カ年の第2期研究へと展開することになりました。しかしながら、すぐにでも社会に役立つ技術・知見があれば、超鉄鋼研究プロジェクト終了を待たずして、段階的に社会還元を進めるべきという強い社会的要請があります。
 そこで、その候補として2つの実用化前研究課題(超微細粒鋼製品、新溶接線材)と2つの調査研究(高窒素ステンレス製品、超微細粒非鉄製品)を設定しました。さらに、これらの技術を民間へ効率的に移転するため、当機構と民間・大学との有機的連携を図るリエゾン機能として「商品化促進室(仮称)」を新たに設置しました。
 超微細粒鋼製品の例としては、図1に示すような超微細粒棒鋼を用いた部材や異形鉄筋材への応用があります。同じ合金素材でも超微細粒にするだけで高強度化を図ることができ、例えば大量の鉄筋が使用されている大型構造物では、大幅な軽量化や維持費の削減が期待できます。
 また新溶接線材の開発については、橋梁の補修溶接用の被覆溶接棒として、当機構が開発した低温変態点溶接棒を用いることにより溶接部に圧縮残留応力を付与することができます。その結果、図2に示すように、溶接継手部の疲労強度を約2倍に向上することを可能にしました。この技術を実際の構造物に適用させることにより、従来溶接構造部材の弱点であった溶接部での健全性は飛躍的に向上し、高安全な溶接構造物の実現が可能になるものと期待されます。

図1 民間実機設備で製造された18mm角×20m長さの1ミクロン超微細組織鋼



図2 低温変態点溶接材料を用いることで溶接継手の疲労強度は飛躍的に向上



<用語説明>
負荷応力範囲:繰返し負荷時の最大応力と最小応力の差のこと。
疲労繰返し数:疲労破断するまでの繰返し数のことで、ある応力範囲以下では破断しない疲労限界を示す。


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