“社会・都市新基盤実現を目指す超鉄鋼プロジェクト”
新たな材料設計指針の確立と
材料特性・評価の標準化を目指して

材料基盤情報ステーション
クリープ研究グループ
木村 一弘

 

材料基盤情報ステーション
疲労研究グループ
宮原 健介



異なる側面からの材料設計指針の確立
 超鉄鋼第1期の研究成果として新たな未踏技術を開拓する可能性が数多く見出されています。まず、CO2の排出量を大幅に削減する高効率火力発電用の高強度耐熱鋼としては、前頁の図に示すCフリーマルテンサイト合金とフェライトベース高Cr鋼が提案されています。これらの材料については、従来材料と比較した場合、化学組成や金属組織が大きく異なり、優れた高温強度を示すことを明らかにしました。また、軽量化により自動車等の省エネルギーに貢献する高強度鋼では、高強度化の阻害要因である水素を無害化することが期待されるナノスケールの水素トラップサイトを解明するとともに、材料中の水素分布を高分解能で可視化するAFM-銀デコレーション法(図1)を確立しました。
 超鉄鋼第2期では、第1期で提案された材料の高強度発現のメカニズムを解明し、高強度耐熱鋼の新しい材料設計指針を確立するとともに、省エネルギーへの貢献の観点から水素脆化機構を解明し、水素脆化の問題のない材料設計指針を確立することで、遅れ破壊特性評価法の標準化を目指します。

ナノ~マクロでの材料特性・評価の標準化
 耐熱鋼の長期使用に伴う材質劣化は、粒界近傍で回復が進行する組織の不均一性に起因します。また、マルテンサイト組織(600℃焼戻しSCM440)の強度は、評価対象領域のサイズに依存します(図2)。
 それらの材料特性の発現機構を解明するためには、ナノインデンテーションやAFM、TEM等を活用したナノからマクロの異なるサイズでの検討、すなわちナノ・メゾ・マクロ多階層解析を行い、マクロ特性と組織因子との関係を明らかにすることが重要です。
 そこで、超鉄鋼研究で開発された材料の高温強度・常温強度・腐食特性等のマクロ特性評価を行うとともに、ナノ・メゾ・マクロの異なる階層での評価・解析を行います。これらの評価・解析の際に得られる評価法・解析技術及び開発材料の特性データについては、将来のデファクトスタンダードとして標準化するとともに、得られた知見を基に材料創製指針の提案を目指します。

図1 AFM-銀デコレーションによる水素分布の可視化白点が銀粒子で、水素位置に対応する 図2 超微小硬さ試験機(ナノインデンテーション)による焼戻しマルテンサイト組織鋼のナノ・メゾ・マクロ多階層解析


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