“社会・都市新基盤実現を目指す超鉄鋼プロジェクト”

高強度高耐食の新構造体を目指して

超鉄鋼研究センター
溶接グループ
平岡 和雄



 都市新基盤構造物を提案するための課題として「高強度耐食鋼を活用した鋼構造物の安全性に関する研究」を設定しました。
 本課題では、材料の高強度化を有効に活用する新構造設計やその設計ニーズに応える最適な特性を持つ超鉄鋼材料の開発および構造物として最適な特性を発揮できる溶接・接合技術の開発に取り組んでいきます。
 日本や東アジアなど海洋に面し、また多湿な地域での構造物では、鋼材の耐食性が重要になります。そこで超鉄鋼材料として高強度化と同時に高耐食性を満たすファクター4の高強度高耐食鋼の研究に焦点を絞りました。
 図に示すようにAlやSiを添加することで、100年後の腐食量が一般低炭素鋼や従来耐候性鋼に比べて1/4~1/10にできる可能性を見出しています。そこで結晶粒を1ミクロン以下に微細化して強度を2倍化できる第1期成果技術を活用して、リサイクルが容易なFe-C-Mn-Si-Al成分系での厚板800MPa高強度耐食鋼創製のための基礎研究を進めていきます。
 超鉄鋼板を構造物にする接合技術では、工場内では高品質な溶接施工、現地では施工が容易なボルトによる接合とイメージ的に仕分けしました。
 溶接は、熱によって溶接用ワイヤと鋼材を溶かして、その後凝固した溶接金属によって接合されます。このとき溶接熱による鋼板特性をできるだけ損なわないために、入熱半減かつ能率2倍の超狭開先アーク溶接法や深溶込み大出力レーザ溶接法を提案しました。
 第2期では溶接金属部の特性を高強度、かつ長寿命のファクター4化するための基礎研究に重点を置き、上記の提案溶接法を展開して実模擬構造体を作り上げて実証するための基礎研究を進めていきます。
 一方ボルト接合では、耐候性成分により、遅れ破壊に優れた強度2000MPaのファクター4の高強度耐候性ボルトを作り上げることを目指した基礎研究を進めていきます。
 本課題においては、実際の使用環境での新構造体の長寿命化を実証することが重要になります。実環境や実働負荷状況を模擬して評価する研究、さらに構造体の特性をより強化する塗料やその塗装技術、及び溶射表面皮膜技術研究も進め、これらの総合的性能評価のもと、開発技術を活かせる新構造を提案し、その実現を目指していきます。

図 Niレスで腐食量を大幅に低減できるAl、Si添加耐候鋼




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