固体表面上で分子ナノ構造制御を実現

ナノマテリアル研究所
ナノデバイス研究グループ
横山 崇



 最近注目されているナノテクノロジーでは、積み木のように原子や分子を組み立てていく方法の開発が求められています。特に、機能性分子を用いれば、それを思い通りに組み上げることで、まったく新しい機能の発現が期待できます。このような分子組み上げについての研究は、溶液中での組織化という観点では多く行われてきましたが、デバイス構築のために重要な固体表面上でのナノ構造構築という観点ではほとんど進んでいませんでした。我々と通信総合研究所の共同研究グループでは、個々の分子を選択的につなげるための“手”を付加することによって、機能性分子を思い通りに組み上げる技術を開発しました。
 ポルフィリン分子は、機能性分子として最も注目されている分子の一つです。このポルフィリンにシアノ基を“手”として付加することによって、分子同士が自発的につながるように工夫してあります。このような分子を自己組織化を利用することによって金の表面上で組み上げ、その一つ一つの並び方を超高分解能・走査型トンネル顕微鏡(STM)で画像化しました。図は、ポルフィリン分子に付加するシアノ基の数や位置を変えることによって、三量体、四量体、そしてワイヤ構造と選択的に変化した分子ナノ構造のSTM像とそれに対応する構造モデルです。このように、機能性分子に“手”を付加することによって、基板表面上で思い通りに分子ナノ構造を組み上げられる可能性が明らかになりました。こういった分子組み上げ技術の向上によって、一つ一つの部品分子を組み上げた新機能分子ナノデバイスの実現が期待されます。
 本研究は、名古屋市のナノ分子フォトニクス共同実験施設で行っています。この研究室は、約2年前に研究環境を整備する段階からスタートしました。良心的な方々の協力により研究環境は改善されていますが、まだまだ不自由なことが多々あります。この場を借りて、更なるご理解とご協力をお願いしたく思います。

図 付加するシアノ基の数や位置を変えることで配列変化したポルフィリンのSTM像(一辺5.3nm)と分子モデル
(本研究成果は、昨年10月11日付英国科学誌ネイチャーで発表されたほか、毎日、日刊工業、日本工業、日経産業などの国内各紙、英、米、独、スペイン、ブラジルの新聞や雑誌に紹介されました。)


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