ジョセフソン磁束線の新奇現象
フロー抵抗に見られる周期的振動

ナノマテリアル研究所
ナノ物性研究グループ
平田 和人



 高温超伝導体は図1に示すような層状性結晶構造をとっており、1.5nmという非常に薄いナノレベルの非超伝導層が超伝導層に挟まれています。このため、高温超伝導体は結晶内にジョセフソン結合を内在することになります。超伝導体(第二種)に磁場をかけると磁場は量子化され、磁束線量子となって超伝導体内に存在します。ジョセフソン接合に平行に磁場をかけると磁場はジョセフソン磁束線として侵入し、通常の磁束線量子とは異なった性質を有します。特に高温超伝導体は多数のジョセフソン接合が積層した構造であり、磁束線の分布は図2のように考えられていました。しかしながら、これまでジョセフソン磁束線の分布がどのようになっているかも実験的に明らかにはされていませんでした。
 最近、我々は、電流を図2の矢印方向に流し磁場を変化させてジョセフソン磁束線を水平方向に駆動すると、図3のような磁束線フロー抵抗に周期的な振動があることを発見しました。これはジョセフソン磁束線が図2に示した上下につぶれた三角格子状に分布している証拠であり、かつ、ジョセフソン磁束線が上下方向に整然と揃って試料内に出入りすること、即ち、位相が揃ったコヒーレントな状態が現れることを見出しました。また、この整然とした配列は振動の底にあたり、磁束線が一本(2.07×10-7gauss・cm2)増加する毎に抵抗が増加することを意味しています。これは磁束線の数を何らかの方法で制御できれば、それに対応した出力を得ることができ、今までにない新しい機能を持ったデバイスを創製できる可能性があります。この制御方法としてナノレベルの制御電極を形成することが鍵となり、ナノ構造の構築が、今後、期待されています。

図1 Bi-2212単結晶の結晶構造

図2 ジョセフソン磁束線分布の模式図




図3 磁場の増加によってジョセフソンフロー抵抗に見られる周期的な振動




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