特集“ナノ物質・材料”その1

欠陥制御ダイナミックスによる光機能化に関する研究
新しい単結晶育成技術による高性能光機能材料の開発に向けて

物質研究所
単結晶グループ
北村 健二



 光による情報伝達、情報処理、情報記憶、加工、センシング等の技術開発は急速に発展しつつあり、これらの技術が21世紀におけるキーテクノロジーになることは間違いありません。特に、光情報技術では、近年の情報処理量の爆発的な増大により、超高密度・超高速伝送技術あるいは超大容量記憶メディアの開発が急務となっています。これらの分野で応用されるデバイスを開発するには、材料特性の大幅な改善や新しい材料の開発が必要です。
 ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウムで代表される強誘電体単結晶は、電気や光などの外部からの情報信号によって、光学的な性質を制御できる機能を持ち、光関連分野で広く応用されるポテンシャルを持っています。しかし、いままでの材料では、結晶中の不純物や原子配列の乱れ(欠陥)が多く、光デバイス材料としての応用に限界があります。これは、従来の単結晶育成法における便宜上の理由から来るものですが、例えば、市販されている材料の1cm角には、このような欠陥が10の20乗個近く存在しています。これによって光機能は大きく損なわれてしまいます。
 本プロジェクトでは、ニオブ酸リチウムとタンタル酸リチウムを対象材料として、新しい単結晶育成法の開発を通し、従来より1桁から2桁、欠陥量を低減した材料の開発を目指します。これにより、光機能特性が大幅に改善される事を期待しています。
 そこで、不純物の混入を制御するため、るつぼ材の高純度化、粉末原料の高純度化に関する研究、原料供給システムを用いた二重るつぼ単結晶育成法の実用化技術開発を行います。また、光機能材料としての基本特性、性能特性等の評価法標準化を行います。
 プロジェクトで開発した技術は、機構から生まれたベンチャー会社オキサイドを含めた民間企業へ積極的に技術移転を進めていきます。

図1 開発中の超恒環境単結晶育成装置.
4インチ径の低欠陥高品質結晶が育成可能.

図2 欠陥量を制御した定比タンタル酸リチウム単結晶(左:Y軸育成、右:X軸育成)





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