特集“ナノ物質・材料”その1

光デバイス材料
ナノテクノロジーによる強誘電体光デバイスの開発

ナノマテリアル研究所
ナノシンセシス研究グループ(併任)
北村 健二



 次世代高速光通信を実現するには、要所要所で使われる光デバイスの開発が不可避です。ここで、日本の卓越した「もの作り」能力をもってこの分野における役割を確保することは大変重要です。特にナノテクノロジーを駆使した材料開発に基づく光デバイス開発は、日本が米国をリードした分野と位置づけられているものも多くあります。この中で、光あるいは電気信号に応じて、波長を変換したり、光強度を変えたり、特定の波長を選択・増幅する機能をもつ強誘電体単結晶デバイスに期待がかかります。
 本プロジェクトでは、すでに機構で萌芽した、低欠陥強誘電体単結晶材料、フォトニック結晶を中心として、これらのデバイス開発を行います。特に、近年注目されている強誘電体の分極反転構造を利用した機能デバイスの開発には、半導体素子作成と同様のナノスケールにおける制御技術が必要となります。しかも、機構で開発した欠陥制御ニオブ酸リチウムやタンタル酸リチウム単結晶材料は、優れた光機能特性を持っているだけではなく、室温で分極を反転するのに必要な電界が、従来材料よりも1桁低く、優れた加工制御性を持っていることがわかってきました。これらの材料を使うことにより、いままでにないデバイスの開発も可能とします。
 そこで本プロジェクトでは、機構で開発した材料を用い、実装レベルおよび次世代応用を目指した波長変換デバイス、光変調デバイス、光回折デバイスの開発を、デバイス化基盤技術の確立を通して、次のような研究チームを編成して行います。
(1)波長変換デバイスチーム
 パターン化した強誘電体分極反転技術の確立を中心として、波長変換デバイスおよびそれに適した材料の開発を行います。
(2)光変調デバイスチーム
 導波路技術の改善を中心として、超高速駆動光変調デバイスの開発を目指します。さらに走査プローブ顕微鏡下におけるナノドメインエンジニアリングを中心とした次世代デバイス作成技術の開発を行います。
(3)光回折デバイスチーム 
 特定波長の高効率選択を目指し、ナノフォトニック結晶の材料探索およびデバイスの開発と、次世代記憶メディアとして期待するホログラム用材料の設計を目指します。

図1 AFMによる分極反転境界の観察.従来材料の境界(左)と
綺麗に制御された低欠材料における境界(右).写真1辺は10ミクロン.




図2 走査プローブ顕微鏡下における強誘電体分極構造の制御図





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