磁気ダンピングの理論計算

磁気ダンピングは、磁化ダイナミクスにおけるエネルギー散逸を定量化する重要なパラメータです。磁気記録媒体の書き込み速度や、スピントルク素子に必要なスイッチング電流を左右するため、デバイス性能に直結します。一般的な第一原理計算パッケージでは磁気ダンピングを直接評価しにくいため、私たちはトルク相関モデルに基づく専用コードを開発し、電子状態計算から定量的にダンピングを求められるようにしました。

本コードは材料探索に使いやすい設計になっており、合金系に対する仮想結晶近似(VCA)に対応し、バルクと多層超格子の両方へ適用できます。この枠組みにより、FePt記録媒体の真性ダンピングに対する有限温度効果を解析しました。その結果、格子振動はキュリー温度近傍でダンピングをわずかに増大させることが分かり、高温で観測される大きなダンピング低下は、真性要因よりも外因的要因の寄与が支配的である可能性を示しました。

さらに、Fe4N系合金について、磁気ダンピングと磁歪の関係を調べました。(Fe1-xCox)4Nでは、電子ドーピングの描像を導入することで実験傾向を再現し、磁歪の符号とダンピングの大きさに相関があることを見いだしました。この傾向は、fcc-(Ni1-yCoy)合金やパーマロイで知られる挙動とも整合します。これらの結果は、少数スピン状態密度ピークに対するフェルミ準位の位置制御により、ダンピングと磁歪を同時に設計できることを示しています。

References

2025

  1. Giant tunability of magnetoelasticity in Fe4N system as a platform to unveil correlation between magnetostriction and magnetic damping
    Keita Ito , Ivan Kurniawan, Yusuke Shimada , Yoshio Miura, Yasushi Endo , and Takeshi Seki
    Commun. Mater., Mar 2025
  2. Microscopic correlation between magnetostriction and magnetic damping
    Ivan Kurniawan, Keita Ito , Takeshi Seki , Keisuke Masuda, and Yoshio Miura
    Phys. Rev. B., Sep 2025

2023

  1. Theoretical study of the effect of lattice dynamics on the damping constant of FePt at finite temperature
    Ivan KurniawanYoshio MiuraGuangzong XingTerumasa Tadano, and Kazuhiro Hono
    Phys. Rev. B, Sep 2023