research

「接着」・「界面」をキーワードとして、自身の機能によって生体組織の再生・治癒を誘導する生体材料の基礎研究を行っています。医歯学系機関、企業と積極的に連携し、基礎から応用研究へ展開しています。

湿潤組織/臓器表面に接着する高強度・生体親和性接着剤の開発

低温・高濃度でも流動性を示すスケソウダラゼラチンの一部を疎水化した「疎水化タラゼラチン」と「生体親和性架橋剤」の2成分から構成される高強度・生体親和性接着剤の開発を行っています。 2成分を混合すると約5秒以内に硬化すると共に、湿潤状態にある大動脈、大腸、肺などの組織・臓器表面に接着し、血液や空気漏れを防止することができます。また、治癒に伴って体内で分解・吸収されるように設計されているため、再手術が不要という特徴もあります。

参考文献
Colloid Surf B, 220, 112946 (2022)
J Biomed Mater Res A, 110, 909-915 (2022)
Acta Biomater, 121, 328-338 (2021)
Int J Biol Macromol. 163, 2365 (2020)
Biomater Sci 5, 982 (2017)

早期消化管がん除去後の傷口を被覆する粒子の開発

内視鏡による早期消化管がん除去後の傷ついた消化管組織に接着してゲル層を形成し、組織の再生を促進する粒子を開発しています。内視鏡を通して簡便にがん除去部にデリバリーすることができ、組織に接着、被覆後、体内で分解・吸収されるため、組織の修復後に再手術をする必要はありません。内視鏡手術後の食道がん除去後の狭窄や大腸・十二指腸穿孔などの合併症を予防する医療材料としての応用が期待されます。

参考文献
Acta Biomater, 159, 83-94 (2023)
Acta Biomater, 149, 139-149 (2022)
Mater Sci Eng C, 123, 111993 (2021)
Acta Biomater, 99, 387-396 (2019)
Small, 15, 1901566 (2019)

成長因子フリー血管新生誘導材料の開発

体内で血管誘導を促進するリポ多糖(LPS)がドデシル基を有することに着目して、ドデシル化ゼラチン(ゲル・粒子・シート)を調製し、LPSと同様のTLR4を介した血管内皮細胞成長因子の分泌促進メカニズムにより、血管新生が誘導されることを実証しています。血管網の形成を必要とする大型臓器再生のための材料として応用が期待されます。

参考文献
ACS Biomater Sci Eng, 7, 4991-4998 (2021)
RSC Adv, 10, 24800-24807 (2020)
NPG Asia Mater, 12, 48 (2020)
J Tissue Eng Regen Med, 13, 2291-2299 (2019)
Macromol Biosci, 19, 1900083 (2019)

1液型ホットメルト組織接着剤の開発

温めて塗るだけで手術後の傷を治す医療用接着剤を開発しています。ゼラチンの分子間相互作用を制御することによって、加温によって液状になり、体温で硬化する「ホットメルト」特性を導入した組織接着剤を設計しました。この新しい接着剤は1液型で取り扱いが容易であり、組織接着性、生体適合性、さらに手術後合併症の予防効果も高いなど、医療材料として優れた特徴を併せ持っています。

参考文献
ACS Appl Bio Mater, 5, 10, 4932 (2022)
Acta Biomater, 146, 80-93 (2022)