理事長メッセージ

国立研究開発法人 物質・材料研究機構理事長 宝野和博

 国立研究開発法人物質・材料研究機構(以下「NIMS」)の「環境報告書2025」をとりまとめました。
 多様な価値観や利害が国境を越えて交錯する現代グローバル社会において、私たちは、環境、エネルギー、食料、感染症など地球規模の様々な問題に直面しています。地球温暖化対策には、あらゆる手段を講じて温室効果ガス排出を抑制することが求められています。
 NIMSでは、これまでに培った先端的な共通技術や無機、有機の垣根を超えて発現する、ナノサイズ特有の物質特性等を利用して、再生可能エネルギーの利用を促進するための新材料、省エネルギーに資する新材料、環境負荷の低い新材料、希少元素の減量・代替・循環のための新材料に関する研究をプロジェクトとして進めています。
 2016 年10月には特定国立研究開発法人に移行し、「多様なエネルギー利用を実現するためのネットワークシステムの構築に向けたエネルギー・環境材料の開発」をキーワードに、太陽電池、全固体二次電池、空気電池、燃料電池、水素製造システム、熱電デバイス等に関わる材料を開発し、そのシステム化やデバイス化の実現を目指すとともに、エネルギー変換・貯蔵の基盤としての電極触媒を開発するほか、理論計算科学による機構解明・材料設計やマテリアルズ・インフォマティクスの活用等により、エネルギー環境材料の開発を加速することとしています。なお、NIMSが開発した蛍光体により、高効率なLED 照明を世界に普及させることができ、エネルギー使用、環境配慮の面で社会に貢献しているところです。
 一方、2024 年11月に開催されたCOP29(第29 回気候変動枠組条約締約国会議)では、「新たな集団的数値目標(NCQG)」の骨子合意や、途上国支援強化に向けた国際的枠組みの再構築が行われ、私たちにも一層の気候変動対応が求められることが明確となりました。
 こうした世界的潮流をふまえ、NIMSでは事業活動全体のCO2排出量の可視化と削減、エネルギー効率改善と再生可能エネルギー導入を推進する等、私たちは今後も、COP29で示された国際的な方向性を踏まえながら、国立研究開発法人としての責任を果たし、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
 この報告書では、環境問題に積極的に取り組み、消費電力・ガスの抑制、リサイクルによる廃棄物削減・再資源化、グリーン調達、化学物質等の適正管理、緑地の保存等について年度毎に環境目標と行動計画を立て、その取り組んだ内容について報告しております。
 本報告書を通じて、私たちの活動へのご理解を賜ることができれば幸いです。