材料のフォト・ストーリー「NIMSが誇る実験装置」
パルスレーザー堆積装置:真空中で原料に高エネルギーのレーザーを照射して蒸発させ、基板の上に薄い膜状の試料を形成する装置。全固体リチウム電池の電極材料などの作製に役立てられている。
パルスレーザー酸化膜合成装置:高エネルギーのエキシマレーザーを用いたパルスレーザー堆積法では緻密で高品質の薄膜が形成できるため、半導体のゲート酸化膜や酸化物熱電材料の作製に使われている。
超高真空成膜用クラスター装置:薄膜の作製装置が2台(スパッタリング・電子ビーム蒸着)と熱処理炉の3台の装置がつながっており、高純度の薄膜作製から熱処理までを超高真空で一貫して行うことができる。
超高真空温度可変走査型トンネル顕微鏡:非常に高い真空の中で材料の温度を変えて観察することができるトンネル顕微鏡。超低温や高温で起きる、材料表面での物理現象や原子の化学反応を観察できる。
電子顕微鏡内その場力学解析装置:試料に力を加え、その組織がナノスケールでどのように変化するかをリアルタイムに観察できる透過型電子顕微鏡。材料の変形が始まるきっかけとなる「素過程」の解明を行っている。
和周波発生分光システム:固体や液体の界面に異なる2つのレーザー光を照射すると、両者の和の周波数を持つ「和周波」が発生する。これにより、固体や液体の界面にだけ存在する電子状態や構造、分子振動を分析する。
一方向凝固炉:NIMSの超合金研究の過程で開発された装置。金属が凝固するときの温度分布を制御することで結晶の大きさや形状をコントロールする。超合金タービンブレードの強度を上げる研究に用いられている。
クリープ試験機:弱い力でも高温で長時間かけ続けると材料は破断する。この「クリープ現象」を調べるため、金属を長期間、一定温度で引っ張り続け、歪みを記録している。最長は40年を超え、世界記録を樹立した。
希釈冷凍機・20テスラ超伝導磁石:絶対温度4.2度以下の低温をつくる希釈冷凍機と、20テスラの強磁場を発生する超伝導磁石。極低温・強磁場中で起こる特異な物理現象や、超伝導材料、磁性材料の研究に利用。
NMR(核磁気共鳴)装置:強磁場を作り、原子核の磁性を利用して物質の分子構造や電子状態などを調べる装置。2014年10月、1001MHz(23.5テスラ)の世界最高磁場発生に成功。さらなる強磁場を目指している。
NIMS高輝度放射光ステーション:播磨にある「SPring‑8」で稼働しているビームライン「BL15XU」。「放射光」と呼ばれる特殊なX線を使い、物質の電子状態や結晶構造、原子配列までも知ることができる。