材料のフォト・ストーリー「NIMSで作られる宝石」
褪せることのない輝きを放つ宝石。実は優れた材料でもある。
鮮やかな色や透明さは、光と物質の相互作用によるもの。光、電気、熱、耐久性などで特異的な性質を持つため、日常生活のさまざまな場所で使われている。
宝石のほとんどは、全体がひとつの結晶でできている「単結晶」。原子1個の隙間もない、ひとかたまりの結晶にすることで、構成する元素の特性が極限まで引き出される。
鮮やかな黄色の「ヤグセリウム単結晶(Ce:YAG)」。粉状や板状など、その姿が変わっても単結晶としての特性が損なわれることはない。青い光を当てると白色光を発する蛍光体だが高輝度で熱に強いため、スタジアムなど大空間の照明や車のヘッドライトなど、強力な光を必要とされる場での応用が期待されている。
「TSLAG単結晶」(右)は、光の振動の向きを変化させることができる。自身が出した光の反射で光源が壊れないようにするアイソレータとしてレーザー加工機などで実用化されている。内部に光の筋が見えないのは、光を散乱させる不純物のない非常に高品質な結晶であることの証。
それぞれの単結晶が持つ優れた性質を極限まで引き出すことで、応用範囲を広め、さらに製造コストを削減するため、欠陥のない大きな結晶づくりは重要な研究課題。長年培った知識、経験の見せどころ。
NIMSは今日もさまざまな単結晶を生み出している。どろどろに溶けた原料の液面に結晶が育つ起点となる「種結晶」をつけ、一点から一方向に結晶が育つよう回転させながら引き上げて、冷やし固めていく。1週間ほどで、こぶし大の結晶へと成長する。
輝度、放熱性、電導性など、より高い特性を求めて生み出された結晶たち。未来を照らす新しい光の原石を私たちは常に追い求めている。