10:05-10:45
【基調講演】計量・計測システム分野の技術戦略マップと産総研ナノ計測センター(仮称)での研究
秋宗 淑雄 部門長(産業技術総合研究所計測フロンティア研究部門)
- 2004年4月1日より、産業技術総合研究所の新しい研究部門として、計測フロンティア研究部門が発足しました。 この部門は、新しい現象の解明・解析を可能にする新たな計測ツールの開発と、計測・評価技術を対象に適用して得られた知見を基に知識の開拓を進めることをミッションとしています。
計測・評価技術があらゆる産業・科学技術の研究開発の基盤であることは、論を待ちません。同時に、計測・評価技術が新たな産業振興の牽引力ともなりうることも、最近の様々な顕微鏡の開発により遺伝子操作・解析、バイオ工学などの新たな研究領域・産業分野が生まれたことなどからも明らかです。
本講演では米国国立標準技術研究所 (NIST: National Institute of Standards and Technology) から発行されたUSMS(United States Measurement System)および経済省の技術戦略ロードマップを概括し産総研の計測フロンティア研究部門でのナノ計測に関係する技術を紹介します。
10:45-11:15
コヒーレントフォノンを利用した超高速電子格子相互作用の研究
石岡 邦江 主幹研究員(NIMS超高速現象計測グループ)
- 固体結晶にフェムト秒の超短パルス光を照射すると、コヒーレントフォノンと呼ばれる位相の揃った格子振動が誘起される。コヒーレントフォノンは、ラマン散乱などでは観測しにくい低振動数の格子振動の精密な観測を可能にするだけでなく、光励起された電子正孔プラズマとの相互作用を通じて電子系の緩和過程や速度に関する情報を与えることができる。本発表会ではおもにワイドギャップ半導体のコヒーレントフォノンに関する最近の研究成果について報告する。
11:15-11:45
材料科学に果たす強磁場固体NMRの貢献
清水 禎 グループリーダー(NIMS強磁場NMRグループ)
- NMRで何ができるか/NIMSのNMRの特徴は/研究成果の具体例/今後の展開
14:00-14:30
ナノプローブ計測技術の半導体・グラフェン材料への応用
藤田 大介 グループリーダー(NIMS先端プローブ顕微鏡グループ)
- 私たちはナノスケールの材料表界面解析手法である走査型プローブ顕微鏡(SPM)の計測空間に制御された環境場を導入しながら、半導体や新規材料の表面ならびに表層の構造、物性、機能の原子スケール解析に応用している。半導体としては基盤となるシリコン並びにゲルマニウム、化合物半導体、シリコン酸化物などの表面構造、電子状態、低次元機能について応用解析例を紹介する。また、高移動度などの機能を有することから次世代デバイス材料として期待されるグラフェン超薄膜のナノプローブ解析例について紹介したい。
14:30-15:00
Atomic scale experiments on Ceria single crystals with Atomic Force Microscopy
Oscar Custance グループリーダー(NIMSナノメカニクスグループ)
15:00-15:30
表面電子分光法における基礎物理量データベースの開発とシミュレータへの応用
田沼 繁夫 グループリーダー(先端表面化学分析グループ)
- 表面電子分光法で重要なパラメータである電子の非弾性平均自由行程や物質の光学定数/エネルギー損失関数の計算および計測法の高精度化とそれらを用いた電子輸送シミュレータの開発の現状について報告する。
15:50-16:30
【特別講演】透過電子顕微鏡による結晶格子欠陥の解析
森 博太郎 教授(大阪大学超高圧電子顕微鏡センター)
- 材料における微細組織の解析は、材料評価の基本として重要である。その解析において、透過電子顕微鏡法は大切な役割を果たしている。講演では、透過電子顕微鏡法で調べた、格子間原子型転位ループの酔歩運動、および原子空孔の照射誘起拡散と転位の上昇運動について述べたあと、MeV電子照射によって誘起される結晶−アモルファス−結晶遷移とその意義について報告する。
16:30-17:00
TESマイクロカロリメータを用いたTEM用高エネルギー分解能EDSの開発
原 徹 主任研究員(NIMS先端電子顕微鏡グループ)
- エネルギー分散型X線分光(EDS) は、透過型電子顕微鏡(TEM)での組成分析に多く用いられている手法であるが、エネルギー分解能が低い(140eV)ことが大きな欠点となっている。我々は超伝導遷移端センサ型マイクロカロリメータをTEMに応用することで、従来より一桁以上高い7.6eVというエネルギー分解能でX線スペクトルを取得することに成功した。このことで、ナノ領域での組成分析の精度が格段に向上することが期待できる。当日は、本装置の開発のポイント、測定例を挙げ、その特徴を報告する。