16:00-17:00
透過型電子顕微鏡法と放射光X線回折法を用いたマンガン酸化物の軌道秩序の研究
長尾全寛(ナノ計測センター先端電子顕微鏡グループ)
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強相関電子系物質は、磁場・電場・光などの外部刺激によって物性が劇的に変化するため、新しいエレクトロニクスを拓く可能性を秘めている。強相関電子系物質の物性を特徴付ける3d電子には、電荷とスピンの自由度に加えて軌道の自由度が存在する。巨大磁気抵抗効果を示すペロブスカイト型マンガン酸化物(RE1-xAExMnO3, REはLa3+, Nd3+ など3価の希土類イオン, AEはSr2+, Ca2+ など2価のアルカリ土類金属イオン)は、Mnのホール濃度xに応じて自由度の競合または協力的な結合により多彩な電子物性を生み出すことから精力的に研究が行われており、強相関電子系物質の研究の発展に大きく貢献してきた。軌道の自由度は電荷とスピンの自由度と結合しマンガン酸化物の磁気電気伝導特性に変化を与える重要な役割を担う。特に、マンガン酸化物はJahn-Teller効果が強く働き、軌道が結晶格子と結合してMn3+O6八面体の歪みを引き起こすため結晶構造が大きく影響を受けることが知られている。そのため、結晶構造から軌道の状態を推察することが可能である。そこで、透過型電子顕微鏡法および放射光X線回折法を相補的に用いて結晶学的観点から軌道秩序に関する研究を行った。講演では、Nd1-xSrxMnO3系において現れる軌道秩序の散漫相転移、異方的な軌道秩序の発達、軌道秩序相の競合によって現れるナノスケール不均一状態と磁気的性質との関係について報告する。また、RE0.5AE0.5MnO3において現れる超構造の軌道秩序についても報告する予定である。