16:00-17:00
カンチレバーを用いた応力センシング
中村(板倉)明子 (ナノ計測センター先端プローブ顕微鏡グループ)
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アトムプローブの探針として使用するカンチレバーのベース部分は1ミクロン
から数ミクロンの厚さの基板であり、それ自体をセンサーとして表面応力の検出
などに使用できる。たとえば、シリコン単結晶のカンチレバーの片面だけ酸化さ
せると、そのシリコン酸化物の格子定数や構造の違いによって、シリコン基板全
体がひずむ。ひずみの値を光てこ法や干渉波の測定で検出することにより、シ
リコン基板にかかっている応力を計算することが出来る。また、カンチレバーは
非常に小さい(数十ミクロン幅×数百ミクロン長)ので、応答が速く自重によって
損傷し難いなどの利点があり、センサーとして適している。
水蒸気雰囲気で膨潤を起こすプラズマ重合アリルアミン(PPAA膜)について、湿 度応答の高い薄膜をカンチレバーの片面に成膜することにより、湿度センサーと して利用することを提案した。右図に示すようにPPAA膜が湿度に晒されたことに よるカンチレバーのひずみは、湿度に比例し、なおかつ湿度変化に対する応答が 良い。シリコン基板とアリルアミン膜のすべりをなくすために、界面にアル カンオールの自己集合(SAM) 膜を成膜しておく、ひずみ値の湿度変化が大きい高 重合膜を使うなど、ノウハウを繰りこむことによって、湿度センサーとしての利 用が可能となる。また膨潤ではなく、ガスと反応するポリマーをカンチレバー上 に成膜することによって、トルエンなどの有毒ガスのセンサーとしての利用も期 待されている。