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透過型電子顕微鏡によるカーボンナノチューブの構造と欠陥の観察
橋本綾子 (ナノ計測センター先端電子顕微鏡グループ)
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ナノテクノロジーを代表する材料と言われるカーボンナノチューブは、デバイス、吸着材料など、期待される応用範囲は非常に広い。そのようなナノチューブの特性を決める因子として、グラフェンシートからなる微細構造がある。本発表では、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により明らかになったカーボンナノチューブの構造、欠陥について紹介する。一般的なTEM観察では、ナノチューブは透明な筒としてしか映らない。しかし、我々は観察条件を工夫することで単層ナノチューブを構成する1枚のグラフェンシートの格子を可視化することに成功した。これを利用し、ナノチューブの電気的特性に影響を与えるといわれるカイラリティー(グラフェンシートの向き)を求めた。さらに、電子線照射によってグラフェンシート上に生じた欠陥(5-7員環対、原子空孔、アダトム)を観察することにも成功した。また、連続撮影によって、欠陥の生成や消滅する過程も捉えられた。実際の観察と像シミュレーション結果を比較しつつ、ナノチューブの構造について議論する。