高性能電子顕微鏡による先端材料評価
松井良夫(ナノ計測センター先端電子顕微鏡グループ リーダー)
- 先端電子顕微鏡グループ(並木地区)の概要を紹介する。旧無機材研では1988年に始まる高温超伝導体プロジェクト・構造解析コアにて、「高分解能電顕法」と「粉末回折法(リートベルト法)」の組み合わせによる新しい構造解析体制の確立を目指した。まず1990年に「超高分解能超高圧電子顕微鏡」(最高電圧1300kV、分解能0.1nm)、次いで1997年に「電界放出型分析電子顕微鏡(300kV)」を導入し、高圧安定型超伝導体の構造解析や局素分析で多大な成果を挙げた。また同時に、磁束量子や磁区
構造の評価に対応するため「極低温ローレンツ電顕(300kV)」を導入した(その応用事例は浅香が紹介する)。NIMS発足後の2002年には、元素識別能に優れた「高分解能STEM」を導入し、構造解析・状態分析・磁区観察という、強相関電子系の評価を総合的に行なうためのシステムがほぼ完成した。今後は、収差補正法や位相解析法など、新しいハード、ソフトの積極的導入による、更なる発展を目指したい。
ローレンツ電子顕微鏡による強相関系遷移金属酸化物の磁区構造観察
浅香透(ナノ計測センター先端電子顕微鏡グループ JSPS特別研究員)
- 強相関電子系酸化物の多彩な物性ー超巨大磁気抵抗効果(CMR)や電荷整列などーの多くは結晶構造と電子の電荷やスピンさらには軌道の状態とが結びついて発現していることが知られている。そのような強相関電子系における磁気的エネルギーは,磁場や電場,圧力や化学組成などの変化に対して非常に敏感に作用し,結果として磁区構造に特異な変化が現れることが期待される.本セミナーでは強相関電子系酸化物の磁区構造と結晶構造の関係について、それらを高分解能で動的観察可能なローレンツ電子顕微鏡法により調べた結果を紹介する。