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ハイブリッド磁石による固体高分解能NMR
端 健二郎(ナノ計測センター強磁場NMRグループ)
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一般にNMRの感度と分解能は磁場が高ければ高いほど優位になるためNMR測定では常に高磁場化が求められている。超伝導磁石と電磁石を組み合わせたハイブリッド磁石は超伝導磁石だけでは到達することが困難な30T以上の定常磁場を発生することが出来るため、NMR測定には魅力的な磁石になっている。しかし、その安定度、均一度は超伝導磁石にはおよばないため、固体高分解能NMR測定を実現するためにはさまざまな装置開発(NMRプローブ、室温シム、磁気シールド、電源改造、分光計など)を行わなくてはならない。
これまでに磁場中心の位置や均一度、揺らぎの程度などを調べてきた。[1] そこで、これらの基本的性能評価の結果を踏まえて、固体高分解能NMR測定には必須となるMagic Angle Spinning (MAS)法を併用した固体高分解能NMR測定が現状のハイブリッド磁石を用いてどこまで行えるのかを調べた。
右図に様々な条件下で測定を行った30TにおけるKBrの79Br-MAS-NMRスペクトルを示す。試料の形状やシールド管の有無などがスペクトルに大きな影響を与えていることが分かる。また水冷銅磁石の電源を改良することによって安定度が向上し、より線幅が狭いスペクトルが得られるようになった。現在では分解能3 ppmのスペクトルが得られるまでに至っている。[2]これらの成果について紹介する。
[1] K. Hashi, T. Shimizu, A. Goto, T. Iijima, and S. Ohki: Jpn. J. Appl. Phys. 44 (2005) 4194.
[2] K. Hashi, T. Shimizu, T. Fujito, A. Goto, S. Ohki, K. Shimoda, Y. Tobu and K. Saito: Chem. Lett. 36(2007)884.