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アセチレン燃焼炎法による炭素系材料の合成と構造評価
奥野 華子(ナノ計測センター先端電子顕微鏡グループ)
- 炭素材料は黒鉛・カルビン・ダイヤモンドの同素体とその複合系から構成される極めて多様性の高い材料である。特に、黒鉛に代表されるsp2結合系炭素によって構成される構造体は、その高い異方性により様々な物性の異なる材料を形成することができる。本研究では、ダイヤモンド薄膜の合成法として知られるオキシーアセチレン燃焼炎法を改良し、sp2結合系炭素材料の合成に応用した。本方法は簡便で安価な装置を用い、大気圧中で高速に炭素材料を成長させることができる。結果、実験条件により何種もの異なる構造体が得られた。なかでも、アセチレン燃焼炎を用いて得られる高い温度勾配により、ほとんど欠陥を持たない結晶性の高い黒鉛構造により形成される2種の新材料、1次元構造のポリヘドラル黒鉛結晶、2次元構造のペタル−ライク黒鉛結晶を発見し、詳細な構造評価を行った。また、触媒の導入によりカーボンナノチューブの合成にも成功した。さらに、この装置を応用し窒素を含む有機物の高分子化・結晶化をおこなうことで、非常に高い結晶性を有するカーボンナイトライド相C3N4が合成された。
本セミナーでは、アセチレン燃焼炎法を用いた炭素系材料の合成方法の概要を示し、得られた種々の炭素材料を、ナノ・ミクロと異なるスケールでの構造評価により分類していく。また、本研究により合成されたカーボンナイトライド相について、赤外分光分析・X線回折等から得たデータにより推定される結晶構造を示す。