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マルチターゲット計測系によるX線光電子スペクトル
福島 整(ナノ計測センター先端表面化学分析グループ)
- 近年、高エネルギー励起光電子分光の報告が目立つようになってきたが、これは放射光利用XPSの実験がようやく進められるようになってきたことによる。汎用分析技術としての普及まで視野に入れた場合、実験室規模での実験技術開発とノウハウの確立が重要であるが、現状はその機が熟しつつあることを示していると言えよう。1990年代には、すでに高い励起エネルギーを得るための重金属ターゲットを用いたXPS用封入管球が市販されており、計測に対する新たな装置開発の必要性も少ない。
先端表面化学分析グループでは分析支援ステーションとの協業の下、Ti,Ag,Zr,Mgの4種類のターゲットを装着したマルチターゲットXPS計測系を導入し、それを用いた分析技術確立のための基礎検討を進めている。マルチターゲット仕様とすることで、励起エネルギーをターゲットの数だけ選択出来るため、分析の幅を様々に広げることが期待出来る。
本講では、装置の概要を示すとともに、このような励起源を利用する上での問題点をまず論ずる。次に、実際の測定例から、非破壊3次元深さ方向分析の具体性を示す。また、特にXPSではスペクトルの変化を用いた分析が中心となるため、スペクトルの変化の基礎的な検討が検討の重要な位置を占める。この点に対して、放射光での測定結果と合わせた代表的なスペクトル変化の解析例を示す。