金属・半導体におけるコヒーレントフォノンの発生と制御
長谷宗明 超高速現象計測グループ 主任研究員
- ラマン分光等で観測される格子振動の振動周期よりも十分短いパルス幅のフェムト秒レーザーを固体(半導体や金属)に照射すると、コヒーレントフォノン(位相の揃った格子振動)が瞬時に励起され、ポンプープローブ分光法を用いた反射率変化(あるいは透過率変化)測定によって観測できることが分かっている。光学フォノンの場合は、その周波数はテラヘルツ(THz = 1012Hz)領域にも達する。コヒーレントフォノン分光法は、フォノンをオシロスコープで観るように時間波形として観測でき、固体中で起こる構造相転移などの動的な過程を直接時間測定できる可能性をもっている。しかし、その時間的コヒーレンスを利用したコヒーレントTHzフォノンの制御およびフォノンの制御性を利用した応用に関する研究は未だ少ない。講演では、これまで明らかになっているコヒーレントフォノンの励起メカニズムから、コヒーレントフォノンの制御に至る実験データを示し、その意義やコヒーレントフォノン分光法のナノ構造への応用の可能性について紹介する。