V. DigitalMicrographが扱うデータ類

Ver. 1.2: 2022.11.20
木本浩司

DigitalMicrograph(DM)はTEM装置用CCDカメラ画像のデータ取得のために開発され、その後別ソフトウエア(EL/P)で制御していたEELS装置用システムもDigitalMicrgraphに統合されました。現在では走査透過電子顕微鏡の画像データや、EDSスペクトル、スペクトラムイメージングなどの3次元データ、4D-STEMなどの4次元データなど、さまざまなデータがDigitalMicrgraphで取り扱えるようになっています。
さまざまな種類のデータを入出力可能です。例えば、テキスト・バイナリーファイル、汎用画像ファイル(.tiff, .jpeg)等も入出力可能です。HREM Research Inc. のxHREM simulationの結果も.gfxで入力することができます。他方、.dm3は、ImageJなどでも読むことができます。

1. DMデータに含まれる装置からの情報

DigitalMicrographは自身が制御するGatan社の装置条件に加え、電子顕微鏡本体とも通信しさまざまな情報(例えば電子顕微鏡の動作モードや倍率など)を取得しています。それらはタグ情報として記録され、ユーザーが確認したり編集したりすることができます。

1.1. JEOLのシステムがDMに返信してくる情報

DM内のNote Label 説明 EELS/EDS STEM TEM Diff
Microscope Info.Operation Mode 観察モード Microscope operation mode (最重要) SCANNING IMAGING DIFFRACTION
Meta Data.Signal EELS, X-ray
Microscope Info.Imaging Mode 結像レンズ系 Post-specimen lens setting MAG MAG1, MAG2,SAMAG, LowMAG DIFF
Microscope Info.Illumination Mode 照射レンズ系 Pre-specimen lens setting STEM TEM TEM

1.2. Thermo Fisher ScientificのシステムがDMに返信してくる情報

DM内のNote Label 説明 EELS/EDS STEM TEM Diff
Microscope Info.Operation Mode 観察モード Microscope operation mode (最重要) SCANNING IMAGING DIFFRACTION
Meta Data.Signal EELS, X-ray
Microscope Info.Imaging Mode 結像レンズ系 Post-specimen lens setting DIFFRACTION IMAGING DIFFRACTION
Microscope Info.Illumination Mode 照射レンズ系 Pre-specimen lens setting STEM, STEM NANOPROBE TEM TEM

Microscope Info.として、3つ(Operation, Imaging、Illumination)のmodeが記録されています。表に示したように電子顕微鏡メーカーによって若干異なりますが、Operation Modeは各社共通なので、TEM像(IMAGING)とSTEM像(SCANNING)と電子回折図形(DIFFRACTION)の識別ができるようになっています。EELSやEDSかどうかは、Meta Data.Signalの有無で判定できます。

2. DigitalMicrgraph内でのデータの種類の振り分け

DigitalMicrgraphでは、TEM像や回折図形に加え、EELSやEDSなどで得られるスペクトルやSTEM画像なども取り扱っています。異なる種類のデータを共通の拡張子(.dm3/.dm4)で取り扱うのは、他の科学分析機器と較べるとやや異例です。DigitalMicrgraph側で判別しているはずです。下図に著者が予想した振り分け手順を示します(Gatan社が示している公式なものではありません)。Operation Modeが各社共通になっているのは、そのような事情があるためだと思います。

Fig2.1

データの種類の振り分け方法を著者が確認する必要が生じたのは、データベースのためのデータ構造化のお手伝いをしている時でした。それまでも自分で処理したデータがスペクトルとして認識されないなどのトラブルはありました。いわゆる生データではない計測データをデータベースに登録しようとした際に、実験データに合わせる必要が出てきたため、確認することになりました。