DigitalMicrograph(DM)はTEM装置用CCDカメラ画像のデータ取得のために開発され、その後別ソフトウエア(EL/P)で制御していたEELS装置用システムもDigitalMicrgraphに統合されました。現在では走査透過電子顕微鏡の画像データや、EDSスペクトル、スペクトラムイメージングなどの3次元データ、4D-STEMなどの4次元データなど、さまざまなデータがDigitalMicrgraphで取り扱えるようになっています。
さまざまな種類のデータを入出力可能です。例えば、テキスト・バイナリーファイル、汎用画像ファイル(.tiff, .jpeg)等も入出力可能です。HREM Research Inc. のxHREM simulationの結果も.gfxで入力することができます。他方、.dm3は、ImageJなどでも読むことができます。
DigitalMicrographは自身が制御するGatan社の装置条件に加え、電子顕微鏡本体とも通信しさまざまな情報(例えば電子顕微鏡の動作モードや倍率など)を取得しています。それらはタグ情報として記録され、ユーザーが確認したり編集したりすることができます。
DM内のNote Label | 説明 | EELS/EDS | STEM | TEM | Diff |
---|---|---|---|---|---|
Microscope Info.Operation Mode | 観察モード Microscope operation mode (最重要) | SCANNING | IMAGING | DIFFRACTION | |
Meta Data.Signal | EELS, X-ray | ||||
Microscope Info.Imaging Mode | 結像レンズ系 Post-specimen lens setting | MAG | MAG1, MAG2,SAMAG, LowMAG | DIFF | |
Microscope Info.Illumination Mode | 照射レンズ系 Pre-specimen lens setting | STEM | TEM | TEM |
DM内のNote Label | 説明 | EELS/EDS | STEM | TEM | Diff |
---|---|---|---|---|---|
Microscope Info.Operation Mode | 観察モード Microscope operation mode (最重要) | SCANNING | IMAGING | DIFFRACTION | |
Meta Data.Signal | EELS, X-ray | ||||
Microscope Info.Imaging Mode | 結像レンズ系 Post-specimen lens setting | DIFFRACTION | IMAGING | DIFFRACTION | |
Microscope Info.Illumination Mode | 照射レンズ系 Pre-specimen lens setting | STEM, STEM NANOPROBE | TEM | TEM |
Microscope Info.として、3つ(Operation, Imaging、Illumination)のmodeが記録されています。表に示したように電子顕微鏡メーカーによって若干異なりますが、Operation Modeは各社共通なので、TEM像(IMAGING)とSTEM像(SCANNING)と電子回折図形(DIFFRACTION)の識別ができるようになっています。EELSやEDSかどうかは、Meta Data.Signalの有無で判定できます。
DigitalMicrgraphでは、TEM像や回折図形に加え、EELSやEDSなどで得られるスペクトルやSTEM画像なども取り扱っています。異なる種類のデータを共通の拡張子(.dm3/.dm4)で取り扱うのは、他の科学分析機器と較べるとやや異例です。DigitalMicrgraph側で判別しているはずです。下図に著者が予想した振り分け手順を示します(Gatan社が示している公式なものではありません)。Operation Modeが各社共通になっているのは、そのような事情があるためだと思います。
データの種類の振り分け方法を著者が確認する必要が生じたのは、データベースのためのデータ構造化のお手伝いをしている時でした。それまでも自分で処理したデータがスペクトルとして認識されないなどのトラブルはありました。いわゆる生データではない計測データをデータベースに登録しようとした際に、実験データに合わせる必要が出てきたため、確認することになりました。
マテリアルズ・インフォマティクスに見られるように、材料研究においてデータの蓄積・構造化・活用がより重要になってきています。計測データを蓄積・構造化する取り組みは、さまざまな分野・地域で進められています。例えば物質・材料研究機構(NIMS)では Research Data Express (RDE) というシステムを開発しており、DitalMicrographの*.dm3フォーマットなど直接登録できるようになっています。RDEでは、DMの*.dm3のImageTag情報はFijiベースの技術で変換され、メタデータとなります。RDEは文部科学省マテリアル先端リサーチインフラ事業( ARIM )にも採用されており、NIMSが提供するデータプラットフォームサービス DICE のサービスの一つとして開発されています。
データ処理・解析過程中にImageTag情報が欠損した場合、システムが計測データの種類(EELS/EDS/TEM像/Diffraction/STEM像)を識別できない可能性があります。例えば画像処理する場合、倍率などの必須の情報は正しく入力されていても、Microscope Info.Operation Modeのタグ情報まで保持されていない可能性があります。データベースに登録する場合には、あらかじめそれらを確認することが望ましいです。
下記のscriptは、front mostのデータの種類を確認するためのものです。
// DM script for checking data type
image img:= GetFrontImage()
string p_Sgn = "Meta Data:Signal"
string p_OprMd = "Microscope Info:Operation Mode"
string Sgn, OprMd
GetStringNote(img, p_Sgn , Sgn )
GetStringNote(img, p_OprMd, OprMd)
string dtype
dtype= OprMd
if(Sgn == "EELS") dtype= "EELS"
if(Sgn == "X-ray") dtype= "X-ray"
if(dtype==""&&Sgn=="") dtype = "not specified"
string comments
comments = "Data type of '" + GetName(img) + "'\n\t" + dtype
result("\n"+comments)
OkDialog(Comments)
データの種類を修正するためには SetStringNote() を使って上記のImageTag(p_Sgn, p_OprMd)に、"EELS"や"IMAGING"を書き込みます。実験によって得られた生データから全てのImageTag情報をコピーした方が良い場合も有るでしょう。ImageTagをコピーするscriptは、 ImageTagに関する記事 に示しています。
研究者は計測・解析に注力しており、必ずしもscriptに習熟していませんし、ImageTagを手入力するとタイプミスも発生します。我々はDigitalMicrographのメニューとしてGUIで確認・変更できるScript packageも作っています。興味のある方は 木本 までメール等でご連絡ください。共同研究ベース(やってみないとわからない)であればご提供できると思います。