ブロンズ法の原理

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 ここで紹介するブロンズ法は、当機構の代表的な研究成果であり、これを契機に10テスラ以上の高い磁場発生を可能にするNb3Sn化合物線材が実用化されました。

 このブロンズ法と呼ばれる製法は、Cu-Su合金(古くから青銅またはブロンズ合金として知られている)とNb(またはV)との間の拡散反応を巧妙に制御した方法であり、これによりNb3Sn(V3Ga)化合物を、高い臨界電流密度を得るのに有効な微細結晶粒組織で、しかも電磁気的擾乱に対して安定な極細多芯構造で、生成することを可能にします。
 化合物自身は脆弱でインゴットからの直接成形が不可能です。Nb(V)とSn(Ga)から構成される複合線を直接拡散反応する場合、1200 (1370)Kより高温であるとNb3Sn(V3Ga)だけが生成しますが結晶粒の粗大化が避けられません。逆にそれより低温であるとSn(Ga)に富んだ中間化合物のNbSn2,Nb6Sn5 (V2Ga5,V6Ga5)が拡散生成してしまいます。

 一方、ブロンズ法では、Cu-Sn(Ga)固溶体(ブロンズ)のマトリックスとNb(V)の芯から構成される複合体を出発材料にしていることが特徴で、800~1000Kの低温で熱処理しても、その界面に目的のNb3Sn(V3Ga)だけを拡散生成できます(図2)。Sn(Ga)に富んだ中間化合物の生成が回避できるのは、ブロンズ中ではSn(Ga)の化学ポテンシャルが適当に低下するためです。別の表現をすれば、Nb3Sn(V3Ga)がブロンズとNb(V)の間の拡散経路上の唯一の相であること(図3(a))を利用しています。
この製法の特徴は以下の通りです。
  • 化合物生成の手段として固相−固相拡散を利用するのでフィラメント構造をはじめから必要とする
  • 化合物の構成元素で、Gaなどそれ自身の塑性加工が困難な元素も、銅合金にすることで利用が可能である
  • ブロンズの軟化温度が化合物生成温度より低いので中間焼鈍が可能であり、したがって断面減少率に制限がない
  • 延性に富む金属(合金)同士を複合した一種の中間素材の状態で成形加工を行うので、脆弱な金属間化合物を極細多芯構造に作り込むことができる
  • 邪魔な中間化合物の拡散生成をバイパスできる
  • 拡散生成温度が2元系と比べて数百度低いので微細な結晶粒組織が得られる
  • 磁束線のピン止め中心として作用する粒界の密度が高く、磁束線のピン止め力が大きい