プロジェクト研究

ナノ組織制御による次世代高特性材料の創製(研究期間:平成14年〜平成18年)

仮想実験技術を活用した材料設計統合システムの開発
(研究期間:平成13年度〜平成17年度)

熱伝変換素子の開発
(科学技術振興事業団権利化試験事業、研究期間:平成13年〜14年)

新世紀耐熱材料プロジェクト(研究期間:平成11年〜平成15年)
高度計算科学技術研究(研究期間:平成10年〜平成12年)

新世紀耐熱材料プロジェクト

(研究期間:平成11年〜平成15年)

当グループでは,新世紀耐熱材料プロジェクトの1つのテーマとして超耐熱セラミックスの研究を進めています.

スタッフ

研究目標

CO2削減による地球温暖化防止やエネルギー資源の有効利用に貢献するために,高効率複合発電や次世代ジェットエンジンに用いる新耐熱材料を開発することは重要である。窒化ケイ素は信頼性の高い材料であるが, 1000℃以上の高温では強度が低下するためガスタービン材料として使用するには問題があった。日米で行われてきたセラミックスガスタービンプロジェクトでも窒化ケイ素の耐熱性向上は主要テーマであったが,1350℃での使用が限界であった。本研究では,高融点焼結助剤の適用と結晶粒界の完全結晶化を実現する精密粒界制御技術により,材料の使用可能温度を高めることを目指す。材料の開発目標を,「耐用温度1500℃(137MPaで1000時間クリープ破断しないこと)を達成すること」とする。

2001年度までの研究成果

1.製造プロセスに関する研究

高温での強度低下は窒化ケイ素焼結体中に含まれる粒界相の軟化が原因である。本課題では,焼結には有効であって耐熱性の高い粒界相を形成する液相組成を設計することを指針として,高温焼成に適した高融点助剤を検討したところ ,RE2SiO5またはRE4Si2O7N2(REは希土類元素)の組成となるように組成を精密に制御して焼結助剤を添加することにより,耐熱性に優れる粒界相を形成することに成功した。

2.微構造評価に関する研究

窒化ケイ素の焼結過程で起こる粒界の結晶化に関しての知見を得るために,希土類添加窒化ケイ素の粒界相をTEMで調べ,Lu系で約70%の粒界が結晶化していることが確認された。

3.耐久特性に関する研究

高温引張クリープの評価としては,最終的には温度1500℃,応力137MPaの下で1000時間の耐久確認を行うが,現状では大気中では1350℃までしか評価の実績がなかったため1400℃での測定が可能なように装置およびチャックジグを改良した。平成11年度開発材料であるYb系のクリープ測定を行った。この材料は1300℃150MPaで500時間以上の耐久性を有しているが1400℃では数十時間で破断しており1400℃以上ではタービン材料としては問題があることがわかった。

トピックス:高温焼成に適したLu系新規高融点助剤の開発

焼結助剤としてRE2O3(RE:La,Yb,Lu,Sc)とSiO2を用いてRE2SiO5が粒界に析出するように液相組成を設計し,ガス圧ホットプレス法により1900℃で1時間焼結した。図1に焼成中の収縮曲線を示す。収縮が始まる温度およびち密化が達成される温度は焼結助剤の種類により異なり,Lu系は他の系よりも高い。これは,Lu系の液相が高融点であることを示している。一方,焼結体の高温強度は図2に示すようにLu系は他の系よりも高く,1500℃で730MPa,1600℃で560MPaを維持している。このように,ガス圧下での高温焼成法を利用して,それに適したLu系の高融点助剤を用いれば耐熱性に優れた窒化ケイ素セラミックスが得られることがわかった。

上記で開発したRE2O3-SiO2添加窒化ケイ素に関して多粒子粒界の結晶相をX線回折(XRD)およびTEMにより調べた結果,La系を除いて主な結晶相はRE2SiO5であり,特にLu系は他の結晶相は検出されず設計通りとなっていることが確認された。

Lu系についてTEMにより多粒子粒界の結晶化を詳細に検討した結果,図3に示すように比較的大きな多粒子粒界はLu2SiO5相として結晶化していた。しかし,100nm以下の小さな多粒子粒界の多くは非晶質であり,面積割合から推定した結晶化度は約70%であり,今後熱処理による結晶化度の向上が必要である。

図1希土類添加窒化ケイ素の収縮曲線

図2.RESi2O5組成の助剤を添加した窒化ケイ素の高温強度

図3.LuSi2O5組成の助剤を添加した窒化ケイ素のTEM観察

粒界にLuSi2O5が結晶化している


高度計算科学技術共同研究

(研究期間:平成10年〜平成12年)

大規模原子モデルを用いた高機能共有結合性セラミックス焼結体の焼結特性,機械的・熱的性質の評価

当グループでは,計算科学の共同研究を進めています。

スタッフ

主席研究員:広崎尚登

共同研究先

研究目標

構造材料として有望な窒化ケイ素等の液相焼結セラミックスでは,粒界相が機械的・熱的特性に大きな影響を及ぼす。これらの特性に関しての計算による原子レベルからの詳細な予測は,大規模で長時間にわたる計算が必要となるためほとんど行われていない。本研究では,共有結合セラミックス焼結体において粒界相等の原子レベルの構造が機械的・熱的性質に及ぼす影響を,並列計算機に適したアルゴリズムに基づく第一原理分子動力学法並びに大規模原子モデルを用いた古典的分子動力学法により予測し,高機能構造材料の設計指針を明らかにするための計算技術の開発を進めている。

2000年度研究成果

古典分子動力学法とグリーンクボの手法を用いて,α型およびβ型窒化ケイ素単結晶のc軸およびa軸方向の熱伝導率を計算した。β型はα型よりも高い熱伝導率を示し,実験結果と同じ傾向を示した。また,c軸方向はa軸方向よりも高い熱伝導率であり,熱伝導率の異方性が確認された。単結晶の熱伝導率の値は実験では求められておらず,シミュレーションの有効性が確認された。第一原理分子動力学法によりβ型窒化ケイ素単結晶の[0001]方向の引張試験をシミュレートして,理想強度を求めた。

最終報告書 (PDF file) 1MB