正しく表示されない方はこちら
物質・材料研究の『使える!メールマガジン』
vol.120
 
2021.12.14
ナノ多孔質微粒子を降らせたクリスマスツリーの写真
今月の一枚
ナノ多孔質微粒子の雪

しんしんと降り積もる粉雪のように白く、細かいナノ多孔質微粒子。プラスチックにナノスケールの穴(孔)を無数に空けた多孔質プラスチックの一種だ。NIMSでは孔に関する知見を統合し、簡便なプロセスで優れた多孔体を生み出す技術を開発。電池用セパレータや断熱材、医療部材など、幅広い社会ニーズに応えるナノ多孔体の開発を行っている。

HOT TOPICS
NIMSの最新情報をお届け!
ネオジム磁石の写真
最小限の実験で特性を最大化! 
機械学習を活用しネオジム磁石の高特性化に成功
プレスリリース 2021/11/25

最強の磁石材料として名高いネオジム磁石。近年、電気自動車などの駆動モーター用磁石としての需要が急増しています。その作製条件と磁石特性の実験データに機械学習を適用することで、最小限の実験回数で磁石特性を最大化できることを実証しました。迅速かつ効率的なネオジム磁石の高特性化に期待大!

NIMSの歌の写真
NIMSの歌ができました!? 
「物質のふしぎの歌」配信中♪

「未来の科学者たちへ」でコラボしているクリエイティブ集団「ユーフラテス」と一緒に、NIMSの歌を作りました。NIMSが日々研究している物質・材料の面白さ、奥深さを歌詞に込めました。思わず口ずさんじゃう、ゆる~いメロディをお楽しみください!

....and more!
人工ニューラルネットワークの仕組みの図 人工ニューラルネットワークで明らかになった
高温超伝導の隠れた起源

プレスリリース 2021/11/9

LaB6ナノワイヤ電界放出型電子銃の写真 高エネルギー分解能
LaB6ナノワイヤ電界放出型電子銃の開発

プレスリリース 2021/11/9

NIMS公式ウェブサイト
TREND
材料の潮流をつかめ!
今、この材料がアツい!
蒸汗センサとデータ送信の写真
Vol.6
蒸汗センサ
たった2秒で熱中症のリスクを判定! 
体内の水分の多いか少ないかを高感度で計測可能にする高速センサ

近年、救急搬送が増加している夏場の熱中症や冬場の脱水症。自覚した時にはすでに重症化しているケースも多いことから、発症する前の段階で発見できることが望ましい。その目安となるのが「汗」。これまでに、どのくらい発汗しているかによって、早期発見につなげようという様々な試みが進められてきた。しかし、既存の方法では計測に時間がかかったり、精度や感度に課題があり、幅広い普及には至っていないのが現状だ。

そこで川喜多が開発したのが、見えない水滴をも感知する「蒸汗センサ」。センサに指先をたった2秒近づけるだけで、蒸発した汗(水蒸気)を感知することから名づけたこのセンサを使い、体内の水分量を測定し、熱中症のリスクを判定することを考案。

蒸汗センサの写真
縦6.5cm、横5cmと小型で軽量(86g)。最近、ワンチップ化の目途がつき、今後ウェアラブルデバイスへの応用も期待される。

皮膚から汗を直接吸収して計測したり、湿度センサを利用したりする他の方法より、応答時間がはるかに速く、計測の精度や感度も高い。速乾性があるため繰り返しの利用にも適しており、小型で携帯にも便利だ。これまでに、データマイニングという情報処理を行うことで、センサの数値と体重(体水分)の増減率の間に相関があるところまで分かってきた。

モイスチャーセンサの写真
現在、農業用ハウス内で生産されることの多いトマトは、毎年生産量の約10%が、結露が原因とされる病害で廃棄されてしまう。モイスチャーセンサを使えば、早い段階で結露の発生を検知でき、病害を未然に防ぐことができる。

「見えない水滴も感知できる」という技術を生かして、川喜多は「モイスチャーセンサ」という農業用のセンサも手掛けている。農業ハウス内で湿気によって発生する農作物の病害をいち早く感知し、被害を最小限に抑えようというものだ。
これらセンサのコア技術となっているのが、センサチップの電極構造。センサ基板上の電極表面に白金をコーティングすることにより、感度が劇的に向上した。また、センサ表面を親水性と疎水性に分けることで、水滴の粒の大きさの判別精度が高まり、微小な水滴も的確かつ高速に感知できるようになった。

加えて、蒸汗センサなら短時間で計測できるようにデータの収集間隔を短くしたり、モイスチャーセンサならセンサ表面の温度変化を制御するなど、用途によって必要な機能を付加することも可能だ。

どちらのセンサも現在、実用化に向けての実証段階に入っている。「センサによって、結露由来の病害を減らしたり、汗の出方で熱中症にかからなくなったり、そういった新しい社会の在り方を提案していきたい」(川喜多)。目に見えない水滴をも捉えた先に、どんな未来が待っているのか——川喜多のセンサから目が離せない。

川喜多研究員の写真
「この技術を発展させて水滴の質を測る研究も進めています。ユーザーの方々に喜んでいただける、助けになる技術をこれからも提供していきたいですね」(川喜多)。
もっと知りたい!
アツい「蒸汗センサ」「モイスチャーセンサ」の世界

★NIMS NOW 『NIMS発ベンチャーの挑戦』P6-9(Vol.20 No.6)
「見えない水滴まで検知するセンサの潜在ニーズに応える」

★NIMS公式YouTubeチャンネル「まてりある’s eye」
『湿度の質を見分けられる! 新型センサー』

★川喜多研究員が登場するNIMS NOW 『センサ・アクチュエータ号』
近日公開! お楽しみに!

BOOK
どっぷり浸かるサイエンスの世界
オトナ科学本
\今月はコチラ!/
本の表紙写真「やってみよう! NIMSの材料実験」
「やってみよう! NIMSの材料実験」
NIMS 著
アグネ技術センター
執筆者のひとり、研究者YouTuberこと“こもりん”が解説!

NIMSの研究者たちがうんうん考えながら作り上げた材料実験が、一冊の本になりました! いや~、感慨深いですよ。なにせNIMSの前身である金属材料技術研究所、無機材質研究所の時代から約30年、材料研究を多くの方に伝えるべく、イベントなどで地道に披露してきた実験の数々が、こうして本になったんですから(涙)。
金属をはじめ身の周りに溢れている材料の物性を体感できる、選りすぐりの実験が詰まっています。物性がわかると、なぜその材料がそこに使われているのか、理由がわかって、材料を見る目が変わるはずです。おすすめはステンレスの応力誘起変態(P38)と金属の熱処理(P78)。簡単ですが、物性の大きな変化が見えるおもしろい実験です。それから、装置作り。僕ら研究者も0から装置を作ったり、市販の装置を改造したりして、新材料の物性を測ります。装置をデザインすることは、物性の原理を知ることに通じるので、そういう感覚をぜひ味わってもらいたいですね。本では、ホームセンターなどで手に入るもので作れるよう工夫したので、気軽にトライしてみてください。
科学好きの中高生はもちろん、大人がいれば小学生も挑戦できます。まずは難しい理屈は抜きにして、わっと驚いたり、すごい!と感心したり、研究者になったつもりで楽しんでもらいたいですね。

あらすじ

雑誌『金属』に連載された「やってみて初めてわかる材料の不思議」を改編・加筆した実験本。各分野で活躍する8名のNIMS研究者が、材料科学の魅力を伝えるため、試行錯誤の末に作り上げた実験や工作の数々を収録。

※本メールマガジンは、配信を希望された方にのみ、お届けしております。
※本メールマガジン掲載のテキスト、画像、または一部の記事の無断転載および再配布を禁じます。

国立研究開発法人 物質・材料研究機構(NIMS)
〒305-0047 茨城県つくば市千現1-2-1

登録解除
 
©国立研究開発法人 物質・材料研究機構(NIMS)