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| 概要 準結晶は、結晶では許されない5回対称や10回対称の特殊な秩序構造(準周期構造)をもつ合金である。物性も特異で、金属であるにもかかわらず、欠陥の少ない完全な準結晶ほど脆く、電気や熱が伝わりにくいなどの特徴を持ち、表面エネルギーも小さい。電子構造の点では、フェルミ面近傍での状態密度が小さい、いわゆる擬ギャップが現れる。こうした特異な物性と、特殊な構造との関係はいまだ十分理解されていない。本研究では、表面科学的手法を用いて、準周期構造の詳細、準周期構造と物性の関係を探ることが目的である。 |
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研究課題
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実験装置
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| 研究成果 (1)安定な清浄準結晶表面の生成に関する“inter-layer spacing rule” 一般に、結晶をある方位に垂直にカットして表面を出したとき、その方位に積層した原子層のうち原子が最も密に詰まった層が安定な表面となって現れることが経験測として知られている。準結晶でも結晶と同様、原子層が積層した構造とみなすことができるが、結晶と異なるのは、厳密な意味で同じ構造を持った層は決して存在しないという点である(正二十面体相と呼ばれる準結晶の場合)。従って、上述の経験則を単純に適用することでは、準結晶でどういった原子層が表面となるかを予測することができない。 我々は、準結晶の安定表面の構造を調べるために、正二十面体相準結晶Al-Cu-Fe の5回対称表面のSTM像を観測し、詳しく解析した。その結果、高さの異なる2種類のステップ(L=longとS=short)が現れること、LとSがフィボナッチ列を成して積層していることを発見した(図1a)。さらに、正二十面体相準結晶Al-Pd-Mnで得られたバルクの構造解析の結果と比較し、準結晶の安定表面生成の法則として、“inter-layer spacing rule”なるものが成り立っていることを発見した。すなわち、安定な表面は、Lステップに対応する厚い原子層のうち、広いギャップによって上の層と隔てられた部分に現れることが分かった(図1b)。 詳細は、Phys. Rev. Lett. 93, 165502 (2004) に報告した。 |
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| 図1: (a) 正二十面体相準結晶Al-Cu-Fe の5回対称表面のSTM像。高さの異なる2種類のステップ(L = 0.37 nm と S = L/τ, ただしτ= 1.618...(=黄金比))がフィボナッチ列、 LSLLSLSL…、を成している。 (b) 正二十面体相準結晶Al-Pd-Mnの構造が、5回軸方向にみると、原子層(dark gray)とギャップ(light gray)とが積層しているものであることを示している。、矢印は、安定表面になり得る場所(ギャップが大きいところ)。 | ||
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| 図2: 正二十面体相準結晶Al-Cu-Fe の5回対称表面のSTM像 (a:観測した像、b: フーリエ変換フィルタリングした像) | ||
| (2)単元素から成る準結晶薄膜 準結晶は、一般に二元・三元またはそれ以上の合金である。特殊な構造である上に組成上の複雑さが、その特異な物性の研究を困難にしている。本研究では、エピタキシーの手法により、単元素から成る準結晶の薄膜を作製することによって組成上の複雑を排した系をつくり、その物性を研究しようと考えている。これまでに正二十面体相準結晶Al-Md-Mnの5回対称表面や正十角形相Al-Ni-Coの10回対称表面に貴金属元素の薄膜作製を試みたところ、下地のAlが貴金属層に拡散し下地の対称性を反映した合金の薄膜が得られた(Progress in Surface Science 75, 227 (2004)、Surf. Sci. 507-510, 276 (2002)、Jpn. J. Appl. Phys. 40, 6073 (2001))。 一方、貴金属元素より表面エネルギーの小さいSnをAl-Cu-Feの5回対称表面にやや高い温度で蒸着したところ、下地の構造を反映したSnの単層準結晶薄膜が得られた(図3)。 |
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| 図3: 約1MLのSnに覆われた正二十面体相準結晶Al-Cu-Fe の5回対称表面(STM像). | ||
| (3)モデル触媒 多くの準結晶はAlを主成分とする合金であるが、しばしばNi、Pd、Fe、Cuなどの触媒活性を持つ金属を含む。また実際、粉末の準結晶が高い触媒活性を持つことが報告されている。準結晶が機械的に脆く、粉末化が用意で あることを考えると極めて有望な触媒系である。本研究では準結晶の触媒性を表面科学的な手法で調べるために、モデル触媒として清浄な準結晶表面に金属のナノ粒子を作製しその物性・反応性を調べることを目指している。 |
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| 図4: 約1MLのCuに覆われた正二十面体相準結晶Al-Cu-Fe の5回対称表面(STM像). | ||
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