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材料科学分野において真にイノベイティブな研究を行い、飛躍的な成果を挙げた世界のトップ研究者に毎年NIMS Awardを授与しています。

NIMS Award 2018 受賞者決定!

今年度のNIMS Awardは「機能性材料」分野から、特に磁性・スピントロニクス材料において応用に至った材料イノベーション、またはその契機となった基礎研究について顕彰します。

佐川 眞人氏大同特殊鋼株式会社 顧問
研究成果:ネオジム磁石の発明と実用化
研究分野:永久磁石材料
佐川 眞人
宮﨑 照宣氏東北大学 名誉教授
研究成果:トンネル磁気抵抗素子における室温巨大磁気抵抗の実現とそのスピントロニクスデバイス応用に関する先導的研究
研究分野:スピントロニクス、磁性材料
宮﨑 照宣

研究成果の概要と業績の学術界・産業界への波及

佐川 眞人氏

【研究成果の概要】
世界最強の磁石であるネオジム磁石を発明し、粉末冶金法による異方性磁石の大量生産法を開発することにより短期間での工業化に大きく貢献した。この新磁石の発明により、ハードディスクドライブなどの電子機器の小型軽量化、ハイブリッド・電気自動車の実現が可能となった。受賞者は1980年代初期に個人の発想によりNd-Fe-B系合金が磁石として有望であることを見出し、住友特殊金属(株)に入社後、直ちに世界最強のNd-Fe-B系磁石を開発、1982年に住友特殊金属から特許出願、1983年にその成果を公表した。ネオジム焼結磁石は、当時最強の永久磁石であったSm-Co系磁石の最高性能を越えただけでなく、自然界に豊富に存在するFeを主成分とし、希土類元素の中では資源的にも豊富なNdを用いたという点で画期的であった。永久磁石にはCoが必須という当時の常識を覆し、当時の原料資源に関する課題を一挙に払拭しただけでなく、初めて高磁化を有する正方晶化合物を発見したという学術的価値も大きい。発明後35年を経た現在でも世界最強磁石であり続け、電気自動車やロボットなど、応用分野はますます広がっている。

【業績の学術界・産業界への波及】
受賞者は1982年に異方性ネオジム磁石の基本特許を取得し工業化に成功したのみならず、Nd-Fe-B磁石試料を学術研究のために積極的に提供することにより、世界の研究者を巻き込んでネオジム磁石の基礎研究を推進し、ネオジム磁石の材料科学の発展にも大きく貢献した。住友特殊金属において実用化された製品はNEOMAXと命名され、1985年から商業生産が開始された。原料価格が安く、最強の磁石として、ネオジム焼結磁石の生産量は応用分野の拡大に伴い急速に増加し、2015年には世界でおよそ7万トンが生産されたと推定される。ネオジム磁石は、ハードディスクヘッド駆動用アクチュエータに応用され、ネオジム磁石なしでは現代のデータストレージ技術の実現は不可能であった。その後、ネオジム磁石は、ハイブリッド車、電動自動車の駆動モータおよび発電機、風力発電、省エネエアコン、介護ロボットの駆動装置に利用され、今後その使用量はさらに拡大することが予想されており、その社会的インパクトは計り知れないほど大きい。

宮﨑 照宣氏

【研究成果の概要】
強磁性層/絶縁層/強磁性層の3層構造からなる強磁性トンネル接合素子では、2つの強磁性層の磁化の相対角度に応じてトンネル抵抗が変化するトンネル磁気抵抗(TMR)効果が発現する。その最初の報告は1960年代まで遡るが、受賞者の研究以前は極低温でのみの極めて小さなTMR観測に限られていたために、応用という観点からは注目されていなかった。受賞者は、東北大学においてトンネル磁気抵抗素子に関する先駆的な研究を行い、1995年、Fe/アルミナ/Feの3層磁気トンネル接合素子により世界で初めて室温における巨大なトンネル磁気抵抗効果を観測した。この研究によりTMR素子は初めて実用的な観点から注目されるようになった。受賞者はTMRの室温動作実証後、この研究開発を国内外の多くの共同研究と、産学連携を伴うプロジェクトによって先導的に推進し、トンネル磁気抵抗素子のスピントロニクスデバイス応用に多大な貢献を行った。この研究が契機となり、従来のエレクトロニクスの分野に新たにスピントロニクスという研究領域を広く認知させるとともに、ハードディスク用再生ヘッドや磁気抵抗ランダムアクセスメモリ(MRAM)など、強磁性トンネル接合素子を用いた産業の創出に大きく貢献した。

【学術界・産業界への波及】
受賞者が室温で観測したトンネル磁気抵抗(TMR)効果の発見は、2001年にハードディスクドライブの超高感度再生ヘッドの実用化につながり、ハードディスクの記録容量の向上に大きく貢献した。数10 Gbit/in2に過ぎなかったハードディスクドライブの記録密度は、トンネル磁気抵抗ヘッドの実用化により、現在では1 Tbit/in2まで伸び、現在社会の膨大な情報のストレージを支えている。またTMR素子は次世代不揮発メモリMRAMのメモリセルや様々な磁気センサーとしても実用化されている。室温におけるトンネル磁気抵抗効果は、高いスピン分極率や磁気異方性を有する材料の探索や、スピン輸送によって生じるスピントルク生成など工学・理学のあらゆる側面の研究に波及している。これらのスピントロニクスにおける先駆的な研究は学会ならびに産業界から高く評価され、朝日賞、応用物理学会業績賞、アメリカ物理学会賞等に代表される多くの賞を受賞している。また、東北大学の教員としての長いキャリアの中で学生の教育指導にも尽力し、現在、磁性・スピントロニクス分野で活躍する多くの若手研究者を育成し、当該分野における我が国の研究水準の向上に多大な貢献を行った。

2017年の授賞式の様子(2017年10月4日(水)つくば国際会議場 中ホール300)

授賞式の様子

左からNIMS理事 藤田、石田先生、Prof. Ågren、Prof. Sundman、NIMS理事 小出

2017年の受賞記念講演の様子

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左からProf. Ågren、Prof. Sundman、石田先生

NIMS WEEK 2018 学術シンポジウム開催決定
日時:2018年10月15日(月)
場所:東京国際フォーラム ホールB5