振動発電の高効率化に新展開 : 強誘電体材料のナノサイズ化による新たな特性制御手法を発見
2017.07.10
(2017.07.12 更新)
名古屋大学
科学技術振興機構
物質・材料研究機構
東京工業大学
愛知工業大学
静岡大学
名古屋大学の研究グループは、NIMS、東京工業大学、愛知工業大学、静岡大学、スイス連邦工科大学らの研究グループと共同で、振動発電の効率向上につながる強誘電体材料の新たな特性制御手法を発見しました。
概要
名古屋大学大学院工学研究科 (研究科長 : 新美 智秀) 兼 科学技術振興機構さきがけ研究者の山田 智明 (やまだ ともあき) 准教授らの研究グループは、物質・材料研究機構技術開発・共用部門の坂田 修身 (さかた おさみ) ステーション長、東京工業大学物質理工学院の舟窪 浩 (ふなくぼ ひろし) 教授、愛知工業大学工学部の生津 資大 (なまづ たかひろ) 教授、静岡大学電子工学研究所の脇谷 尚樹 (わきや なおき) 教授、スイス連邦工科大学ローザンヌ校材料研究所のNava Setter (ナバセッター) 名誉教授らの研究グループと共同で、振動発電の効率向上につながる強誘電体材料の新たな特性制御手法を発見しました。
代表的な強誘電体であるチタン酸ジルコン酸鉛の膜を、イオンビームで細い棒 (ナノロッド) 状に切り出すと、そのサイズによって強誘電体の特性を支配する分極の向きの割合 (ドメイン構造) が大きく変化することが明らかになりました。この結果は、強誘電体の表面における分極の電荷遮蔽の影響で説明できますが、これは上記のナノロッドが同じサイズであっても、その側面を金属で被覆すると、ドメイン構造が変化することにより証明されました。
本研究成果は、従来から行われてきた材料組成や歪みの制御といったアプローチではなく、材料の形状やサイズ、さらには周りの環境により、電荷遮蔽を制御することで、強誘電体の特性向上が実現する可能性を示しています。この新しいアプローチを応用することで、環境中の振動を電気エネルギーとして取り出す発電素子 (エナジーハーベスタ) の効率向上による小型化が期待でき、Internet of Things (IoT) で期待される振動センサや圧力センサの自立的な電源として利用できる可能性があります。
この研究成果はネイチャー・パブリッシング・グループの学術誌「サイエンティフィックレポート (Scientific Reports) 」オンライン版に7月12日付 (日本時間18時) で掲載されます。
プレスリリース中の図1 : 放射光マイクロX線回折測定のセットアップと試料の概要。放射光X線をレンズで集光してナノロッドに照射し、ロッド1本 (単体) の回折測定を行った。