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新規添加剤の開発によるペロブスカイト太陽電池の安定性の向上

~光照射下での安定性が6倍向上 早期実用化へ前進~

国立研究開発法人 物質・材料研究機構 (NIMS)

NIMSの研究グループは、ペロブスカイト太陽電池のホール輸送層に用いる新規添加剤を開発し、安定性を大幅に向上させることに成功しました。

概要

  1. 国立研究開発法人物質・材料研究機構 エネルギー・環境材料研究拠点 韓 礼元 上席研究員をはじめとする研究グループは、ペロブスカイト太陽電池のホール輸送層に用いる新規添加剤を開発し、安定性を大幅に向上させることに成功しました。暗所保存では1000時間を経ても性能の劣化が見られず、連続光照射下においても、初期効率の85%まで劣化するのに要する時間は従来の添加剤より6倍長くなり、安定性が大幅に改善されました。今後、ペロブスカイト太陽電池の実用化への取り組みが加速すると期待されます。
  2. 塗布プロセスで製造可能なペロブスカイト太陽電池は20%以上の変換効率が報告されてから大きな注目が集まり、現在世界中で熾烈な研究開発競争が行われています。その結果、効率は着実に向上してきましたが、安定性には大きな課題が残されています。特に酸化チタン/ペロブスカイト/ホール輸送層で構成された順セル構造のペロブスカイト太陽電池は最も高い変換効率を示していますが、安定性が非常に低く、光照射のない状態でも劣化が進み、200時間で約3割も変換効率が低下します。そのため安定性の低さの原因究明と新規材料開発による長期安定性の向上が、実用化のために大きな課題となっていました。
  3. 今回研究グループは、順セル構造のホール輸送層に用いるピリジン系の添加剤TBPに注目しました。実験結果の解析によりTBPとペロブスカイト材料が化学反応を起こすことが安定性を低下させる大きな原因となっていることを明らかにしました。さらに赤外分光やX線回折による分析の結果、反応は主にピリジン環にある窒素原子とペロブスカイト結晶の間で生じることが分かりました。そこで、この反応を防ぐために、窒素原子の隣接位置にアルキル基を導入することで、立体障害効果 (二つの反応原子を空間的に近づくことを防ぐこと) が生じ、この化学反応の抑制に成功しました。その結果、今回開発した新規ピリジン誘導体を用いたペロブスカイト太陽電池は、暗所において1000時間を経ても性能の低下が認められませんでした。連続光照射下においても、初期の変換効率から85%まで劣化する時間が、従来の添加剤の場合は25時間弱だったものが、今回開発した新規添加材を使用すると150時間まで伸ばすことができ、安定性が6倍以上改善しました。
  4. 今回の成果は、ペロブスカイト太陽電池の劣化メカニズムの解明による新規材料開発というアプローチが、安定性の向上に非常に有効なアプローチであることを実証しています。今後は、引き続き安定性に影響を及ぼす原因を究明し、新規材料の開発を行うことで、ペロブスカイト太陽電池の早期の実用化を目指します。
  5. 今回の研究成果の一部は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) が実施中の「高性能・高信頼性太陽光発電の発電コスト低減技術開発」プロジェクトの一環として得られたものです。本成果は、「Advanced Materials」誌オンライン版にて10月5日 (現地時間) に公開されます。

「プレスリリースの図1a :  順セル構造ペロブスカイト太陽電池の模式図、b : ピリジン誘導体の分子構造 (左) と青色で示すアルキル基のついた新規ピリジン誘導体の分子構造 (右) 。」の画像

プレスリリースの図1a : 順セル構造ペロブスカイト太陽電池の模式図、b : ピリジン誘導体の分子構造 (左) と青色で示すアルキル基のついた新規ピリジン誘導体の分子構造 (右) 。




本件に関するお問い合わせ先

(研究内容に関すること)
国立研究開発法人 物質・材料研究機構
エネルギー・環境材料研究拠点
太陽光発電材料グループ
上席研究員 韓 礼元
TEL: 029-859-2305
E-Mail: apvc=nims.go.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください)
(報道・広報に関すること)
国立研究開発法人 物質・材料研究機構
経営企画部門 広報室
〒305-0047 茨城県つくば市千現1-2-1
TEL: 029-859-2026
FAX: 029-859-2017
E-Mail: pressrelease=ml.nims.go.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください)

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〒305-0047 茨城県つくば市千現1-2-1
TEL.029-859-2000 (代表)