ZnOコーティングによる高性能ベアリングの開発に成功

~摩擦を約3分の2に低減し、災害時用小型ジェットエンジン発電機を実現~

2016.06.08


国立研究開発法人物質・材料研究機構
国立大学法人東北大学
有限会社フォックスコーポレーション

NIMS、東北大学の研究グループは、NIMSが独自に開発した環境に優しい低摩擦材料である酸化亜鉛 (ZnO) について、その低摩擦特性を保持したままベアリングボールにコーティングする技術を開発し、ベアリングの摩擦係数を約2/3に低減させることに成功しました。

概要

  1. 国立研究開発法人 物質・材料研究機構、エネルギー・環境材料研究拠点の後藤 真宏 主席研究員、情報統合型物質・材料研究拠点の佐々木 道子NIMSポスドク研究員、構造材料研究拠点の土佐 正弘グループリーダー、ならびに、東北大学 多元物質科学研究所の栗原 和枝 教授、粕谷 素洋 助教らは、NIMSが独自に開発した環境に優しい低摩擦材料である酸化亜鉛 (ZnO) について、その低摩擦特性を保持したままベアリングボールにコーティングする技術を開発し、ベアリングの摩擦係数を約2/3に低減させることに成功しました。また、このベアリングを小型ジェットエンジンに搭載することにより燃料消費量を1%削減し、FOXコーポレーションと共同で、災害時用の小型ジェットエンジン発電機を開発しました。
  2. 地球環境・エネルギー問題が深刻化するなか、エンジンなどの駆動機構で発生する摩擦を低減することは、省エネルギー化につながるため重要な技術です。一方、エンジンの中の駆動部は高温環境に曝されることから、耐熱性が要求されます。研究グループは、摩擦低減効果と耐熱性を併せ持つ酸化亜鉛 (ZnO) に注目し、ZnOの低摩擦現象が発現する仕組みをナノレベルで解明し、結晶配向性を制御することにより低摩擦のZnOコーティングを作製する基盤技術を構築してきました。
  3. 今回、これら基礎技術の実用化を目指して、市販されているベアリングのさらなる低摩擦化に挑みました。籠状のサンプルホルダーにベアリングボールを入れて回転させることで、結晶配向性を制御しながら球状のベアリングボール上にZnOをコーティングする技術を開発し、市販の高性能ベアリングの摩擦係数を約2/3に低減することに成功しました。このベアリングを小型のジェットエンジンに組み込んで性能評価を行なった結果、燃料消費量が1%低減されました。そこで燃料の調達が困難な災害時用発電機の小型化に取り組み、ZnOコーティングしたベアリングを搭載した小型ジェットエンジン発電機の開発にも成功しました。重量は40kg程度と大人2人で運ぶことができる程度の重さながら、およそ家庭2軒分の消費電力にあたる8000Wの出力を取り出すことができ、今後、災害時の非常用電源として展開予定です。
  4. 今回開発した低摩擦ZnOコーティングは、常温から高温まで、かつ、油中、真空中、大気中において幅広く使用できるため、ベアリングへの応用だけに留まらず、低摩擦化が必要なあらゆる駆動部への応用が期待できます。今後、自動車などの多くの駆動部にこの技術を適用することにより、さまざまな分野での省エネルギー化の実現が期待されます。
  5. 本成果は、文部科学省大学発グリーンイノベーション創出事業「グリーン・ネットワーク・オブ・エクセレンス」 (GRENE) 事業先進環境材料分野の「グリーントライボ・イノベーション・ネットワーク」プロジェクト (代表研究者 : 東北大学 栗原 和枝 教授) により得られました。本成果は、2016年8月5日、京都で開催されるPRICM-9国際学会にて発表される予定です。

「プレスリリースの図5 :  ZnOコーティングベアリングを搭載した災害用小型ジェットエンジン発電機 (当該発電機で発電した電力でライトを点灯している様子)」の画像

プレスリリースの図5 :  ZnOコーティングベアリングを搭載した災害用小型ジェットエンジン発電機 (当該発電機で発電した電力でライトを点灯している様子)



本件に関するお問い合わせ先

(研究内容に関すること)

〒305-0047 茨城県つくば市千現1-2-1
国立研究開発法人 物質・材料研究機構
エネルギー・環境材料研究拠点
熱電材料グループ
主席研究員
後藤 真宏 (ごとう まさひろ)
TEL: 029-859-2746
E-Mail: GOTO.Masahiro=nims.go.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください)
〒980-8577 仙台市青葉区片平2-1-1
東北大学 多元物質科学研究所
教授
栗原 和枝 (くりはら かずえ)
TEL & FAX: 022-217-6152
E-Mail: kurihara=tagen.tohoku.ac.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください)
国立研究開発法人 物質・材料研究機構
情報統合型物質・材料研究拠点
情報統合型材料設計分野
伝熱制御・熱電材料グループ
NIMSポスドク研究員
佐々木道子 (ささき みちこ)
TEL: 029-851-3354 (ext.3734)
E-Mail: SASAKI.Michiko=nims.go.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください)

(報道担当)

〒305-0047 茨城県つくば市千現1-2-1
国立研究開発法人 物質・材料研究機構
経営企画部門 広報室
TEL: 029-859-2026
FAX: 029-859-2017
E-Mail: pressrelease=ml.nims.go.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください)
〒980-8577 仙台市青葉区片平2-1-1
東北大学 多元物質科学研究所 総務係
TEL: 022-217-5204
FAX: 022-217-5211
E-Mail: soumu=tagen.tohoku.ac.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください)