グラフェン系材料でトポロジカル状態が発現する新原理を解明

~ハニカム格子最近接格子点間の電子ホッピングエネルギーの調整で実現~

2016.04.14


国立研究開発法人 物質・材料研究機構 (NIMS)

NIMS MANAの古月 暁主任研究者のグループは、グラフェン等のように、ハニカム格子上を電子がホップする系において、トポロジカル状態を実現する新しい原理を発見しました。

概要

  1. 国立研究開発法人 物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 (WPI-MANA) の古月 暁主任研究者のグループは、グラフェン等のように、ハニカム格子上を電子がホップする系において、トポロジカル状態を実現する新しい原理を発見しました。最近接格子点間のホッピングエネルギーの強弱を一定のルールに従って調整すれば、バルクでは絶縁的で、サンプルの縁では散乱が抑制された電流が流れます。今後、新しい指針によるトポロジカル物質の探索が行われ、新規量子機能とデバイスの開発に繋がることが期待されます。
  2. 近年、ハニカム格子上の電子系のトポロジカル特性に関する研究が活発に行われています。これまでの研究で、ハニカム格子の次近接格子点間の電子ホッピングに伴うスピン軌道相互作用によって、トポロジカル状態が発現することが判明しています。しかし、グラフェン等の材料ではスピン軌道相互作用が非常に弱いため、トポロジカル状態の観測が困難です。他の物質や結晶構造も精力的に調べられていますが、現状では非常に低い温度でしかトポロジカル特性が実現されていません。
  3. 本研究グループは、ハニカム格子の最近接格子点の間における電子ホッピングエネルギーの強弱に着目しました。全ての格子点を6員環に分割して、6員環の内部に比べて、6員環同士間のホッピングエネルギーを強くするだけで、トポロジカル状態が実現されることを理論的に解明しました。ホッピングエネルギーは原子間の化学結合エネルギーに比例するため、この方法で得られるトポロジカル状態は、スピン軌道相互作用によるものと比べて非常に安定になり、高温でも機能するトポロジカル特性が実現可能になると考えられます。
  4. 今回解明された方法は、構成元素の特殊な性質や外部磁場の印加等を必要としないうえ、今までに盛んに研究されてきたグラフェン及びその類似材料に適用できるため、新規のトポロジカル物質の探索や、それを用いた量子機能とナノデバイスの研究開発において、新しい展開が期待されます。
  5. 本研究成果は、英科学誌Scientific Reports (オンライン版) にて2016年4月14日午前10時 (現地時間) に掲載される予定です。

「プレスリリースの図1 :  トポロジカル状態を示すハニカム格子の模式図。最近接格子点は実線で結ばれ、緑と赤のボンドはそれぞれホッピングエネルギーの小さい箇所と大きい箇所を表している。次近接格子点は点線で示されている。緑ボンドで囲まれる6員環が人工原子と見なすことができ、反時計回りと時計回りのp原子軌道とd原子軌道を持つ。」の画像

プレスリリースの図1 :  トポロジカル状態を示すハニカム格子の模式図。最近接格子点は実線で結ばれ、緑と赤のボンドはそれぞれホッピングエネルギーの小さい箇所と大きい箇所を表している。次近接格子点は点線で示されている。緑ボンドで囲まれる6員環が人工原子と見なすことができ、反時計回りと時計回りのp原子軌道とd原子軌道を持つ。



本件に関するお問い合わせ先

(研究内容に関すること)

国立研究開発法人 物質・材料研究機構
国際ナノアーキテクトニクス研究拠点
(WPI-MANA)
主任研究者 古月 暁
TEL: 029-860-4897
E-Mail: HU.Xiao=nims.go.jp
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(報道・広報に関すること)

国立研究開発法人 物質・材料研究機構
経営企画部門 広報室
〒305-0047 茨城県つくば市千現1-2-1
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E-Mail: pressrelease=ml.nims.go.jp
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