国立大学法人京都大学 (山極壽一総長) 、公益財団法人高輝度光科学研究センター (以下「JASRI」、土肥義治理事長) 、国立研究開発法人物質・材料研究機構 (以下「NIMS」橋本和仁理事長) 、国立研究開発法人理化学研究所 (以下「RIKEN」松本紘理事長) の研究グループは、ナノメートルサイズの薄膜化により分子の吸着機能を発現する多孔性材料を発見しました。これは、京都大学の北川宏教授、大坪主弥助教、坂井田俊大学院生、NIMSの坂田修身高輝度放射光ステーション長、RIKENの高田昌樹グループディレクターらによる研究成果です。
活性炭やゼオライトに代表されるような吸着材は、分子を取り込み吸着する機能を持つ物質であり、物質内部に多数の小さな穴 (細孔) を有することから「多孔性材料」と呼ばれています。最近では、活性炭やゼオライトに比べて高いガス選択吸着性を示す「多孔性金属錯体 (MOF) 」が高効率分離・濃縮機能を有する多孔性物質として注目され、活性炭やゼオライトに次ぐ新しい多孔性材料として世界中で積極的に研究開発が進められています。
今回、本研究グループは、バルクの結晶状態では分子を取り込む機能を全く示さないMOFが、ナノメートルサイズの結晶性薄膜になるとゲートが開くような構造変化を伴って分子を取り込むようになることを発見しました。ナノメートルサイズの薄膜の結晶成長や分子の取り込みに伴う構造変化は、大型放射光施設SPring-8の高輝度X線による精密なX線回折実験により初めて確認しました。以上の研究成果は、多孔性薄膜材料を用いた新しいガス分離膜、センサー材料や電子デバイスとしての応用に繋がることが期待されます。
なお、本研究は、JST 戦略的創造研究推進事業 チーム型研究 (CREST) の研究領域「ナノ界面技術の基盤構築」における研究課題「錯体プロトニクスの創成と集積機能ナノ界面システムの開発」 (研究代表者 京都大学 北川宏教授) 、JSPS 科学研究費助成事業 若手研究(B)「階層制御された多孔性配位高分子ナノ薄膜の構築と物性探索」 (研究代表者 京都大学 大坪主弥助教) の一環として、また大型放射光施設SPring-8の利用研究課題として行われたものです。
本研究成果に関する原著論文は、英国科学誌「Nature Chemistry」のオンライン版に平成28年3月7日16時 (英国ロンドン時間) に掲載される予定です。