圧電効果を利用して摩擦力の低減に成功

省エネルギー技術として期待

2010.09.21


独立行政法人物質・材料研究機構

NIMS 材料信頼性センターは、酸化亜鉛コーティング膜の結晶配向性をうまく制御すると、大気・真空・油中のあらゆる環境下で低摩擦特性を有することを発見した。

概要

  1. 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 潮田資勝) 材料信頼性センター (センター長 : 緒形 俊夫) 微小材料工学グループの後藤 真宏 主幹研究員は、同グループの土佐 正弘 グループリーダーならびに笠原 章 主幹研究員と共に、酸化亜鉛コーティング膜の結晶配向性をうまく制御すると、大気・真空・油中のあらゆる環境下で低摩擦特性を有することを発見した。また、油中において荷重が大きくなると摩擦係数が小さくなるという通常とは異なる不思議な特徴を有することを明らかにした。
  2. 地球環境・エネルギー問題が深刻化するなか、自然エネルギーによる発電が重要視されると同様に省エネルギー技術の開発も期待されている。有力な省エネルギー対策の一つに材料の低摩擦化技術があげられる。航空機・船舶・自動車などのあらゆる装置の中には駆動部が多く含まれており、そこでは摩擦によるエネルギーロスが発生する。また、近年これらの駆動環境は、高温多湿、真空、油中などの様々であり、それらの環境変化にも耐え、摩擦力を低減できる低摩擦材料の開発が必要不可欠となっている。
  3. 今回、我々は、独自に開発してきたコンビナトリアルスパッタコーティング装置1)を駆使し、酸化亜鉛の結晶配向性を正確に制御することに成功した。それらのコーティング膜について、様々な環境下で摩擦試験を行ったところ、結晶配向性をうまく制御すると、あらゆる環境下で低い摩擦係数を有する材料になることを突き止めた。また、圧子から及ぼされる圧力により、酸化亜鉛の圧電効果2)が機能し、反発力が発生し、油中において高荷重で摩擦係数が小さくなる現象が見られた。
  4. 今回の成果は、磁場や電場などの印加といった特別なエネルギー供給無しで、重力による荷重により、摩擦力の低減を実現できる基本技術であることから、今後、あらゆる装置の駆動部分に利用することにより、省エネルギー化が実現できることが期待される。
  5. 本研究成果は、文部科学省科学研究費補助金、基盤研究A「ピエゾ効果を利用した摩擦力の低減と低摩擦コーティングの開発」により得られたものである。

「プレス資料中の図1:ヘキサデカン中における結晶配向性が最適化されたZnOコーティング摩擦係数の荷重および往復摺動回数依存性」の画像

プレス資料中の図1:ヘキサデカン中における結晶配向性が最適化されたZnOコーティング摩擦係数の荷重および往復摺動回数依存性



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材料信頼性センター 微小材料工学グループ
後藤 真宏 (ごとう まさひろ)
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