初めて観測されたウニのような形の新種の結晶集合体

新しい集合の法則

2010.09.16


独立行政法人物質・材料研究機構

NIMSの国際ナノアーキテクトニクス研究拠点は、インドのジャワハルラール・ネルー先端科学研究センターとの共同研究によって、小さな棒状結晶が特異な関係に従って互いに付着する「新種の結晶集合体」を発見した。

概要

  1. 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 潮田 資勝) 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 (拠点長 : 青野 正和 以下MANA) のGAUTAM Ujjal研究員は、インドのバンガロールにあるJawaharlal Nehru Center For Advanced Scientific Research (ジャワハルラール・ネルー先端科学研究センター、JNCASR) との共同研究によって、小さな棒状結晶が特異な関係に従って互いに付着する「新種の結晶集合体」を発見した。
  2. この結晶集合体は棒状の酸化亜鉛 (ZnO) ナノ結晶で構成されている。酸化亜鉛は生物に優しい半導体であり、透明エレクトロニクス、集光、ピエゾエレクトロニクス、化粧品など多くの用途に利用できる。ここで取り上げる結晶集合体はそれぞれウニのようなカタチをしていて、中心の核から鉛筆のような酸化亜鉛ナノロッドが多数生じている。結晶集合体はどこにでも存在し、多くのデバイスに利用できる。例えば、薄膜技術の分野では結晶性物質を順に重ねて層にしようと研究している。自然界でも、円石藻類のように、精巧な結晶集合体を作り出すバイオミネラリゼーションプロセスにおいて驚くべきコントロールが行われてきた。結晶集合体を研究することは、自然界での結晶の成長の仕組みを理解し模倣するためだけではなく、多くの用途に合わせた物質の組織化、特に個々の成分の操作が困難な小さい領域では非常に重要である。
  3. この結晶集合体の形成に関して新しく発見した法則は、極性と呼ばれる酸化亜鉛の特性に基づいている。これは、酸化亜鉛ロッド結晶が、プラスに帯電した先端部とマイナスに帯電した先端部を作り出せることを意味する。酸化亜鉛ロッド結晶が集合体を形成する際に、何故このような極性が生じるのか、これまで分かっていなかった。 我々は今まさに、1つの集合体において、すべてのロッド結晶がプラスの先端部に沿って成長 (その場合は、マイナスの先端部は中心で固定されている) するか、或いはその逆の成長があることを発見した。さらに重要なのは、2種類の集合体が特異かつ単純な法則で互いに関係していることである。1つの集合体のそれぞれのロッド結晶を上下逆さまに回転させると、極性が反転し、その集合体はもう一方の集合体に変化する。結晶集合体間のこのような特異な関係はこれまで知られていなかった。
  4. 新しい集合の法則は、新規特性の開発には重要である。ロッド結晶はすべて (物理学的性質は) 同じだが、それぞれの先端部の電荷が異なるため、プラスの先端部を持つ集合体、あるいはマイナスの先端部を持つ集合体では、異なる特性をもたらす。それらの極性を考慮せず、一片の物質、あるいはロッド結晶をランダムに集合させることによって同じ特性を獲得することは絶対にできない。
  5. 発光ダイオードに使用される窒化ガリウムのように、極性があり、類似したカタチの集合体を形成する重要物質は他にも数多く存在する。したがって、このような自然な極性制御という特性は、そのようなすべての結晶集合体に該当しうる可能性がある。これは他に例を見ないまったく新しい現象である。過去に存在したことのない特異な性質を持つ物質としての用途の今後の開発が期待される。

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プレス資料中の図1: この結晶集合体の画像



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