水晶波長変換デバイスで波長193nm真空紫外光を発生

2010.09.13


独立行政法人物質・材料研究機構

NIMSとニコンは、水晶のツイン (双晶) を微細制御したレーザーの波長変換デバイスを実現し、真空紫外波長193nmの発生に成功した。

概要

  1. 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 潮田 資勝) 光材料センターの 栗村 直 主幹研究員、株式会社ニコン 原田 昌樹 研究員、株式会社ニデック 足立 宗之 研究員、らは、水晶のツイン (双晶) 1) を微細制御したレーザーの波長変換デバイス2) を実現し、真空紫外波長193nmの発生に成功した。半導体微細加工、眼科治療用紫外レーザーやレーザー加工用高出力レーザーへの応用が期待される。大型光源を10分の1程度に小型化でき、組み込み光源への展開が可能になる。
  2. 物材機構は、強誘電体3) 単結晶における分極反転4) 技術を有し、分極反転波長変換デバイスの研究開発で世界の先導的立場にある。レーザーの波長変換では、中赤外から通信波長の近赤外、可視域、紫外域まで広範な波長域をカバーしており、材料、デバイス形態に関しても様々な種類をカバーしている。これらの中で、今回、水晶を用いたバルクの波長変換デバイスにおいて波長193nmの真空紫外波長を発生することに成功した。
  3. 従来の強誘電体単結晶であるタンタル酸リチウム系材料を用いた紫外波長変換デバイスでは、波長260nm以下では吸収が激しく使用できなかった。これ以下の波長では水分に弱いホウ素系またはフッ素系材料が用いられていた。水晶は宝石としても用いられるほど熱的、化学的に安定で、光に対しても透明なので (紫外150nmまで透明) 、デジタルカメラの光学フィルターやクオーツ時計の発振子として広く利用されている。しかし真空紫外波長発生では、位相整合5) がとれないため効率化が難しく、これまで波長変換に用いられてこなかった。
  4. 強誘電体の分極反転構造と同様な構造を水晶に作製できれば位相整合が可能になり、波長300nm以下の紫外領域にも対応できる波長変換デバイスとなる。今回、栗村らは、水晶に人工的にツイン構造を作製することにより、分極反転構造と同等な極性反転構造を微細周期で形成することに成功した。強誘電体では電界を印加するのに対し、水晶では応力を印加させて反転構造を作製する独自の手法を開発したのである。地下の地盤などでも応力により生じた水晶ツインが観測されるため、地震予知の可能性を求めてツインの研究がなされているが、この現象を新しい視点から全く異なる応用分野へ展開したのである。
  5. 本研究成果は、9月16日の応用物理学会 (長崎大学) にて発表される予定である。

「プレス資料中の図1:電磁波の波長と波長変換デバイス(a)半導体リソグラフィや眼科角膜治療で使用されるレーザーは波長193nmの大型気体レーザーが使用される。この波長は目には見えない紫外線にあたり、固体材料で発生させることが難しい。(b)周期的な極性反転構造を導入することで高効率を可能にするレーザーの波長変換デバイス。レーザーで直接出せない波長を発生させるデバイスとしてレーザーテレビなどで用いられている。周期で高効率波長を選べるため、パターニングで変換波長を設計できる特長をもつ。光学系を簡素化でき紫外レーザーの大幅な小型化を実現する。」の画像

プレス資料中の図1:電磁波の波長と波長変換デバイス
(a)半導体リソグラフィや眼科角膜治療で使用されるレーザーは波長193nmの大型気体レーザーが使用される。この波長は目には見えない紫外線にあたり、固体材料で発生させることが難しい。
(b)周期的な極性反転構造を導入することで高効率を可能にするレーザーの波長変換デバイス。レーザーで直接出せない波長を発生させるデバイスとしてレーザーテレビなどで用いられている。周期で高効率波長を選べるため、パターニングで変換波長を設計できる特長をもつ。光学系を簡素化でき紫外レーザーの大幅な小型化を実現する。



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